2015第1学期『現代文基本マスター』第5講村上陽一郎「歴史としての科学」要約&記述解答&復習問題

【要約】

今日の近代社会の中で、技術革新の具体的な場面で起こっている事態とは異なり、現代が直面する「進歩」論は、そうした個々の場面を包摂する全体的な文脈の中で問題化している。そうした全体的な文脈は、技術が個別的な場面から、科学へと結びついた一つの社会制度へと変革し、いかに自然の支配と制御を行うかという壮大なプログラムとそれに並行して人類の歴史は自分たちの手で築き上げるものだという人間中心主義的な態度によって、形作られた。そして、人類は救済史観の中での「救済」という概念を「世俗化」し、その実現のために科学技術の革新と、旧時代の政治的=社会的=宗教的桎梏の革新を、標榜して前進しなければならなくなった。しかしこうした「進歩」の理念は、近代西欧の「救済」の定義が自明性を失ったことで疑問符が付くようになった。科学技術によって人類が夢見てきた望みが現実化される一方で、人々はそれによって失ったものに再び「救済」を仮託し、また現実化の遅れている地域は、依然としてかつての「救済」を進歩に託している。

 

 

【問1】①包摂 ②営為 ③権威 ④発露

 

【問5】

自然の支配と制御及び人間中心的な態度を成立要件としたヨーロッパの指導的理念としての「進歩」に疑問が生じたということ。

 

《復習問題》テキスト本文10行目「進歩」論について、問題化している「進歩」論とはどのようなものか。次の中から適当なものを選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認すること)。

①人間自らの手によるその悲惨と病苦からの救済のためのプログラムと、自然を支配し制御する科学技術によってキリスト教の救済史観の克服をめ目指すもの。

②社会制度の変革をもたらした技術革新と、個別的具体的な技術の改良によって旧時代の政治的社会的宗教的桎梏の変革を目指すもの。

③自然支配の手段である科学技術の革新と、キリスト教に特徴的な歴史観とで「世俗化」された救済を実現していくための巨大なプログラムを作り出すことを目指すもの。

④近代科学の知識をもって自然を支配し制御する全体的技術のプログラムと、伝統的な救済史観の世俗化による人間中心的な態度とで、理想としての近代社会の創出を目指すもの。

⑤自然を支配する主役として人間存在を捉えようとする科学至上主義的な歴史観と、人間を救済するための独自のプログラムを実現していこうとする人間中心的な態度とで、現代科学の諸問題の解決を目指すもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》④