2015夏期『青木邦容のハイレベル現代文』第2講関根政美「多文化主義社会の到来」要約&補充問題

【要約】エスニシティや民族を客観的な民族文化の指標で規定するのは難しい。いかに我々が文化的愛着を持とうとも、それは客観的共通性を保証するものではない。文化は本来的に雑種であり、異文化との交流と接触によって発展してきたものだからだ。したがってその発展には今後も、各種の文化の共存を保障し交流・理解を促進する「多文化・主義」や文化は社会構築物であるとする文化観が必要である。

㊟上記赤下線部は79行目では「保障」となっているが、意味的には「保証」の方が正しいと思われるので変更した。「保障」=「対象を守る」、「保証」=「確かだと請け合う、責任を持つ」。

 

《復習問題》

テキスト本文43~44行目に「国民文化の発展のためには、むしろ異文化・異言語の存在と異文化間コミュニケーションを保障し」とあるが、ここで「保障」という表現を使い、積極的に「異文化・異言語の存在と異文化間コミュニケーション」を守らねばならないとした意図を示した理由を述べた、次の文の空欄に当てはまる言葉を本文から抜き出して記せ。ただしA・Cは五字以内、B・Dは十字以内で抜き出すこと(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

〇近代以来の、民族自決を基礎とする国民国家制度の国際システムの中では、各民族や国家が、自らの民族自決と国民国家の存続を求めて、民族文化やエスニック文化の純粋性や普遍性を、まさに( A )言説として強調し、またその結果として( B )に陥った。しかしどのような文化も本来的には雑種であり、仮にそのような状況下で先のように民族文化の純粋性を強調した場合、文化を構成するマジョリティ集団のルールが一方的にマイノリティ集団にとっても前提とされ、( C )が捏造される危険性がある。またそれに加えて、たとえ異文化同士が交流しても、それが表面的である場合、相互に自文化の独自性を改めて確認するだけに終わる。そのような( D )状況を防ぐため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

A政治的

B自文化中心主義

C純粋文化

D孤立閉鎖的な雑居状況

2015夏期『青木邦容のハイレベル現代文』第1講橋爪大三郎「社会空間の部分領域」要約&補充問題&記述解答例

【要約】

社会は、人々がそこで生きていく生活の舞台であるがゆえに、われわれのふるまいの集積と言えるが、ふるまいには多くの前提が含まれているために、社会もさまざまな前提を織り込んでいるということになる。それは事実と肩を並べて、社会的現実をかたちづくるが、これは宗教に特有とは言えない。なぜなら宗教の主要なモチーフは「信じる」ことであり、事実と同様のことと考えられて、誰もがそれを疑わず、社会的現実を構成している行動の前提は、「信じる」こととは異なるからだ。宗教は「必ずしも自明でない」ことがらを信じる点で、大きくことなる。しかし宗教は、こうした各文化集団、民族のアイデンティティを形作っている多くの隠れた前提の違いが引き起こす、民族間や文化集団間の抜き差しならない争いを解決する方法の一つでもあった。古代宗教は、社会を再組織するための、より高次の新しい前提を人々に信じさせることで、異なった民族・文化に属する人々が平和に共存するという深刻な課題を解決しようとしたのである。またこれが仏教やキリスト教のような、普遍宗教が求められた動機でもあった。

 

【問7】異なった民族や文化集団が共存する社会へと、社会を再組織するのに、古代宗教はより高次の共通の新しい前提を人々に信じさせた。

《復習問題》

テキスト本文55~56行目(問4解答箇所)に「彼らと前提を~線分を引いてしまった」とあるが、なぜ「外の世界から訪れた人物(宗教学者)」は、伝統社会に住む人々と自分たちの間に宗教上の「区別の線分」を引いたのか。その理由を50字以内で説明せよ(㊟解答例は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答例》

伝統社会が、宗教と同じく神や霊の観念を持ち、しかもその信仰の対象が自分たちのとは異なっていたから。(49字)

《採点ポイント》「信仰の対象が自分たちのとは異なっていた」OR「伝統社会のふるまいが宗教儀礼に見え、しかも信仰の対象が違った」というような内容があればOK。

2015年夏期『医系小論文テスト』MEDICAL☆KING№5【Extra-Self Check!!】《解答例》

1【Exercise】

 遺伝子検査の受検、遺伝子医療・サービスの利用、遺伝情報を調べる医学研究のへの参加が、検査結果によって健康保険や就職などにおいて不利益をうけるかもしれないということへの懸念から減少し、さらに研究そのものに対する社会の理解と協力も得られなくなる。その結果、病気の予防、あるいはより有効で副作用の少ない治療法、医薬品の開発、オーダーメイド医療の実現が困難になるから。

 

2【医系論文Machチェック!!】

①超音波診断(検査)

②母体血清マーカー(クワトロ)検査

③ 5

④優生思想

 

2015年夏期『医系小論文テスト』MEDICAL☆KING№4【Extra-Self Check!!】□7《解答例》

《設問1》表「先進7ヵ国の死亡統計」を見ると、たしかに「先進7ヵ国の中で日本人の癌による死因割合が最も高い」と言える。しかし、「平均寿命」が先進7ヵ国の中で男女ともに1位である点、及び「年齢調整死亡率」においてはがんの死亡率が119人と他国よりも低い値を示している点から、その要因は日本が、がんの発症しやすい環境であるというよりも、日本人が他国民に比べ長寿であるからと考えられる。がんは年齢の4~5乗に比例して増加すると言われている点で、皮肉にも日本人ががんで死ぬ割合が多くなったのは、食生活や公衆衛生、医療環境の改善により、他の病気で死ななくなり、他国民よりも長生きするようになったことが原因であろう。

 

《設問2》

表「先進7ヵ国の死亡統計」の「年齢調整死亡率」内、「傷害(うち自殺)」に注目すると、自殺による死亡率が先進7ヵ国の中で最も高い。平均寿命の延びと共に、高齢者の自殺が現在より増加する可能性が危惧される。

 

《設問3》

 WHOは、その憲章の前文で健康を「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義している。日本は平均寿命などいくつかの健康指標においてたしかに世界一となった。

 しかしながら、先のWHOの定義に照らして日本の健康と幸福について再考してみると、日本が「健康」で「幸福」な国とは言い切れない部分が、多々浮き彫りになってくる。たとえば2013年の日本の自殺者は3万人を切ってはいるものの潜在的な自殺者は多く、表「先進7ヵ国の死亡統計」内で最も自殺率の低いイタリアと比較しても、3.8倍も自殺による死亡率が高いことがわかる。

 そのイタリアは日本同様に、平均寿命が長い。一方日本では65 歳以上の人口がこの60 年間で4 倍, 人口の23%にまで達するが、60歳以上の高齢者の自殺者が増加している。日本は、超高齢社会に突入しつつ、健康や幸福を医療だけではなく、WHOの定義も踏まえながら、社会的な課題として議論し、高齢者の精神のケアも含め、高齢者の生きがい創生や引きこもりの防止などの対策も、まずは地域レベルから積極的に進めていくべきである。