2015年夏期『医系小論文テスト』MEDICAL☆KING№4【Extra-Self Check!!】□7《解答例》

《設問1》表「先進7ヵ国の死亡統計」を見ると、たしかに「先進7ヵ国の中で日本人の癌による死因割合が最も高い」と言える。しかし、「平均寿命」が先進7ヵ国の中で男女ともに1位である点、及び「年齢調整死亡率」においてはがんの死亡率が119人と他国よりも低い値を示している点から、その要因は日本が、がんの発症しやすい環境であるというよりも、日本人が他国民に比べ長寿であるからと考えられる。がんは年齢の4~5乗に比例して増加すると言われている点で、皮肉にも日本人ががんで死ぬ割合が多くなったのは、食生活や公衆衛生、医療環境の改善により、他の病気で死ななくなり、他国民よりも長生きするようになったことが原因であろう。

 

《設問2》

表「先進7ヵ国の死亡統計」の「年齢調整死亡率」内、「傷害(うち自殺)」に注目すると、自殺による死亡率が先進7ヵ国の中で最も高い。平均寿命の延びと共に、高齢者の自殺が現在より増加する可能性が危惧される。

 

《設問3》

 WHOは、その憲章の前文で健康を「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義している。日本は平均寿命などいくつかの健康指標においてたしかに世界一となった。

 しかしながら、先のWHOの定義に照らして日本の健康と幸福について再考してみると、日本が「健康」で「幸福」な国とは言い切れない部分が、多々浮き彫りになってくる。たとえば2013年の日本の自殺者は3万人を切ってはいるものの潜在的な自殺者は多く、表「先進7ヵ国の死亡統計」内で最も自殺率の低いイタリアと比較しても、3.8倍も自殺による死亡率が高いことがわかる。

 そのイタリアは日本同様に、平均寿命が長い。一方日本では65 歳以上の人口がこの60 年間で4 倍, 人口の23%にまで達するが、60歳以上の高齢者の自殺者が増加している。日本は、超高齢社会に突入しつつ、健康や幸福を医療だけではなく、WHOの定義も踏まえながら、社会的な課題として議論し、高齢者の精神のケアも含め、高齢者の生きがい創生や引きこもりの防止などの対策も、まずは地域レベルから積極的に進めていくべきである。