2014春期講習会『センター現代文』第4講伊藤桂一「遡り鮒」解説(三変+R対照表)&解答

【解答プロセス】伊藤桂一「三変+R」 ➔クリックして展開して下さい。

1.㊟➔前書き➔本文と読み進みながら、イメージのように「三変+R」を取る。

文中《  》内がRです。ただし「ぼくは妹がすべてを~悲しませた」の部分はR1に一部Mが重なってます(戦争体験が書かれているため)。

 

伊藤桂一「三変+R」 伊藤桂一「三変+R」2 伊藤桂一「三変+R」3

2.問6から解答していく。

①「自身の不安の根源が戦争にあることがつきとめられ」が✖。三変やRからも推理できる内容ではない。

②前半はM、「安堵」に関してはテキスト36行目で確認できる。後半は変2+R2を見れば明らか(推理の必要もない)。正解である。

③「妹と心が通じ合わない」の部分は27行目以降のR1ですぐに間違いだと分かる。

④前半後半共に間違い。前半は「母の姿に生命の純粋さを感じた」とあるが、本文34~37行目を見れば分かるように「ぼく」が感じたのは、「人間のもっとも純粋な生き甲斐」であって、またそれも「母の姿」ではなく、「母と妹」の寝姿に感じているのである。後半は鮒の姿と妹の姿を重ね合わせている部分が、✖。

⑤前半後半共に書かれていない。✖。

3.問5に移る。ちょうど傍線部Cが変2(ここは変化=「ぼく」の心情の変化)なので、R2との対応関係から解答をイメージする。関係式を書くと「爽やかな感動+生きるための活力の尊さ」ー鮒が何の疑いも恐れもなく、ただ川を遡っていく姿ー鮒の姿に触発され、自身の生きている世界がどうであれ、ただ鮒のように自身のひとすじの道を遡っていくことだ(決意)ー人間を支えているのはささやかな生命感だ➔全ての要素を重ねてみる➔「鮒の懸命に川を遡る姿を見た➔その生命感に何かを感じた➔世界が暗くてもただ懸命に生きていれば良いということを感じた(思った)」となる。この解答のイメージに合うのは③しかない。

4.まず次を見て欲しい。

設問内容が以下❶~❺のパターンに合致する場合、まず全て「内容一致問題」の要領でアプローチする。

 

❶傍線部内の「表現」の本文に与える「効果」「影響」に関する設問。㊟ 「表現の特徴」はまず「傍線部解釈」するこ

と。

 

❷複数の傍線部、波線について、まとめてその内容について答える設問。

 

❸傍線部だけでなく、それまでの内容や、あるいはそれ以降の内容も含めてきくもの、またある一定の範囲についてきく設問。

 

❹例えば-例)傍線部C「いまや、現実が(あるいは夢が)彼のつくりごとをそっくりそのまま模倣しだしているらしいのである」とあるが、この場面の説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。(2000年センター本試験「鼠」堀辰雄著より抜粋)-のような場合に見られるように、傍線部を含めた「場面」について、その内容を問う設問。

 

❺傍線部を設定して、あるいはある特定の事柄を訊くなどしながらも、「本文全体」を意識して答えることを求める設問。

 

 今回のパターンは上記、❷に該当する。よって「内容一致問題」としてあくまで表現ではなく本文で確認できる「内容」で選択肢を選んでいく。

①前半の説明は39~44行目のM(前書き対応)、及び51~58行目のMで確認。後半は問5で見た変2+R2で確認。これが正解。

②前半、「何事もなく~」が前書き、M、変1+R1に合わない。

③『復員してきた時に感じた「ぼく」の心を圧迫する存在としての水』が、51行目からのMに合わない(圧迫を与える存在は「鬱蒼と繁り合っている樹々」である)。

④39~44行目のM(前書き対応)、及び51~58行目のMから「ぼく」の「現在の生活に満足できない⇔これまでの人生を肯定したい」という葛藤は読み取れない。

⑤「母から安らぎを得たい」・・・爆笑選択肢である。✖。

問3 傍線部Bの直前が変1なので、変1+R1で解答に必要な要素=コアやアウトラインを「推理」する。合成するとー「妹の絵ー不思議な意味ーお守りにすがる妹に、軍隊経験が重なり、妹が「いつ死ぬかも知れない」という思いで認識票を大切にしている兵隊のように、生死の境目にあっておびえているという印象を受けるー妹の姿を見ていると、回復しているということを知りながらも、一抹の不安を拭えない」ーとなる。ここから解答のイメージを作ると、『妹が観音様の絵を描く姿や、お守りにすがる姿を見て、妹の不安を感じると共に「ぼく」も妹が回復しつつあると知りながら不安を拭えない」となる。つまり「ぼく」は以上のような説明にある「不安」を感じながら妹の絵を見ていたというわけである。これに近い選択肢は―⑤だ。①は「明るい~判断できない」で✖。②は「絵の稚拙さ」で✖。③は「救いの予兆」や「不安と救い~葛藤」という部分が✖。④は「不可解さ」ではなく「(妹の)不安と祈り」を同時に感じたのであり、「妹と心が通じ合えたら」という祈りの部分も、そもそも妹の祈りでないといけない。「ぼく」が~できたらと祈っているのではない。

5.問2 傍線部AはM及びR1の箇所なので、これまでと同様に設問に合わせて解答のコアやイメージを推理する。これは問3で考えた『お守りにすがる妹に、軍隊経験が重なり、妹が「いつ死ぬかも知れない」という思いで認識票を大切にしている兵隊のように、生死の境目にあっておびえているという印象を受ける』というのを思い出して欲しい。このようなイメージから解答は「妹のお守りと兵隊の認識票が重なって見えることで、兵隊同様に、いつ死ぬか分からない状況に妹があるように思えてしまうから」となる。これに合うのは④しかない。

【解答】問1 ア② イ⑤ ウ③ (4点×3)➔「フジコの法則」でやってみよう!

     問2 ④ (7点)

     問3 ⑤ (8点)

     問4 ① (8点)

     問5 ③ (7点)

     問6 ② (8点)