【お待たせしました!!】2017➔2018冬期講習会『青木邦容の標準現代文』第5講 斎藤環「『ひきこもり』の比較文化論」【イメージチャート】&【ざっくり言うと】&【補足解説&記述解答例】

【イメージチャート】

なぜ若者はひきこもるのか?(1行目)

従来の日本人論に依拠して考える(14行目)

「自立」と「家族」を軸にして考えてみよう(16~17行目)

日本人の自立概念は「親孝行」モデル(41行目)

日本人にとって望ましい親子関係は、互いに甘え、甘やかす関係としてイメージされる(44~45行目)

日本人にとっての自立ないし成功のモデルは(母)親孝行的なもの(61~63行目)

日本人にとっての望ましい自立モデルが「親孝行」であるなら、それはまた「甘え上手」になることを意味する(64~65行目)

「甘え上手」=「互いに甘え、甘やかす関係」になれる成熟度も兼ね揃える(69~70行目)

「甘え下手」=「ひきこもり」(70~71行目)

「ひここもり」=みずからの「甘え」を許せない+親も「甘やかす-しかる」といったモデルしか持ち得ていない-「甘え、甘やかす関係」ではない。(73~75行目)

甘え関係の挫折=「身内」の範囲は核家族まで収縮(78~79行目)

「甘え上手」ではないために相手との距離感を正確に判定できない=「身内」の範囲が一気に狭まる=核家族単位(79~80行目)

日本人の社会性(=11行目の日本の社会的文化的な特異性)=甘え文化と流動的な「身内」意識(91行目)

「甘えの失敗」=日本社会における不適応(97行目)=12段落を思い出そう!!

「ひきこもり」が起こった時、核家族単位で個人を抱え込み、結果として家族まで「ひきこもり」状態に陥ってしまう(101~103行目)

西洋社会の場合(14段落)、社会的不適応は「反-社会的行動」、犯罪に結びつく(95~96行目)㊟外在的父性と内在的父性の軋轢とは、個人と社会が互いに対立することを意味する。

日本では「不適応」は「非-社会的行動」に向かうため(=「ひきこもり」)、若年層が(西洋社会のように)犯罪に向かわないから良いのでは?(社会の平和に貢献)(107~108行目)

 

【ざっくり言うと】

「ひきこもり」というのは日本の社会や文化の特殊性を表しているので、従来の日本人論に依拠して「自立」と「家族」ということを軸に考えましょう~。「自立」の形は世界において色々だけど、日本における「自立」のもっとも望ましい形は親孝行モデルである。日本では自立や成功のモデルは(母)親孝行的なものとされる。日本は「甘え」の文化と言うべき社会で、互いに甘え甘やかす関係が良いとされる(母親というのは「象徴」で、本当の母親でなくても良い。要は甘えられる人間がいて、甘え甘やかす関係を持つことが「自立」であると考えられている)。これは家族内だけでなく他人との関係においてもそうである。したがって「甘え」上手な人は、人間関係において高度にその技術を洗練していることになり、また甘えることと同時に甘やかすこともできる人なので「成熟」した人間だとも言えるわけである。しかし、「ひきこもり」の人は逆に「甘え下手」であるが故に、病理行動に走っているのであり、その家族も「甘え下手」であるゆえに、子供と健全な関係を構築できないわけなのである。そもそも「身内」という特殊な関係性は、「孝」と「忠」が混同されるようになったことでもたらされた。本来、「孝」は、血縁性に基づくものだが、天皇を家長として敬うことを日本国民が強いられた結果、「忠」と「孝」の明瞭な区分はなくなり、血縁以外の人間に「身内」を感じるような特殊性を持つようになった。しかしそうした「身内」との「甘え関係」に挫折すると、「身内」関係は一気に核家族単位まで収縮する。ちなみに西欧社会は、父性原理の社会で、家庭内の問題も父親との間で生じる。また西欧社会は同様に「父性」を持つと考えられるので、社会とも対立することになる。したがって個人の行動が社会に対する犯罪行為になることもしばしばなのだ。それに対して日本は先ほど述べたように「お母さんに甘える」母性社会であり、問題行動は「甘え」の失敗によって引き起こされる。さきほど見たように「身内」への「甘えの失敗」は、核家族内での「甘え」につながり、それにまた失敗して「ひきこもり」状態になる。その中で家族も「ひきこもり」本人や他の身内への甘えに失敗し孤立してしまっている。しかし、西欧社会と比べると、日本の社会性文化性に基づいた「ひきこもり」は、反-社会行動に結びつかない点で歓迎すべき点も多い。ある意味、日本の社会の平和に貢献しているのだ(笑)「ひきこもり」の突出した事例(たとえば犯罪に結びつく暴力行為など)をあげつらうよりも、まず肯定的側面(=普通の「ひきこもり」とはどういう存在か)に配慮すべきだ。

 

【解説補足】

《問2》㋑は後回し。後で消去法で選べば良い。最後まで残るのはbとdだが、dの「しかし」を㋑に入れることができないのは代入すれば明らか。

《問3》㋖は直前に「とき」があるので青木方式㉓からそれより前がヒント。日本にとっての望ましい自立モデルが「親孝行」=「甘え上手」になること、とあり、また「甘え上手」になるということは「成熟」した相手のとの関係として「甘え、甘えさせる」関係を目指すとある。その点で㋖にはdやeが候補として挙がるが決め手がない。なので先に㋘を解くのが良い。ここは「ひきこもり」=「甘え下手」のことの説明だから㋘にはdが入る。なので㋖はeで良い。

《問4》傍線スの前には「その結果」、傍線スの後には「ここに」という指示語もある。前は青木方式21、後は青木方式22で考える。まず「後ろ」から→身内意識の流動性の説明、「前」→天皇という「忠」の対象が、国民の家長とされ、「孝」の対象にもされたことで「忠」と「孝」の区分があいまいになったとある。これと同じ内容を選択肢に探す(青木方式24)。ひとつ注意なのはこの段落が81行目にあるように、「身内」という特殊な関係性が、「孝」概念の変質によってもたらされたーという話をしている点である。傍線部の下で確認した「身内意識の流動性」を忘れてはいけない。これを忘れているとうっかりaにしてしまうかもしれない。aは「一体化」がまずペケ。「一体化」ではなく「混同」。それに対してcは「『忠』概念の拡張」=(「忠」が「孝」と混同される)、「『孝』のような~なってしまった」=(「身内」は家族だけを指さない特殊な関係だが、これは「孝」が血縁以外のもの、例えば天皇にも要求されるようになったことによる)―という本文コアとの対応が見られる。

 

傍線セは、「嗜癖的」という言葉(あるものを特に好む癖)がやや難しかったかもしれないが、青木方式21から傍線部の下の「それゆえ」に着目すれば良い。79~80行目との神経衰弱読みから、家の外部での人間関係に失敗した個人は、残された家族にそれを掛けるしかない。しかし、11段落になるように「甘え、甘やかす」関係が成立するような、「成熟」がそこにない場合、個人は家族に甘えようとして失敗し、また家族も個人に甘えようとして失敗する。しかし、もはやその家族しか行き場がない個人はそこで「甘え」→「失敗」を繰り返すようになるというのだ。これに合うのは青木方式24からcしかない。

 

 同段落ソもセと同様、傍線部下に「さらに失敗する」とある。なので気づいたと思うが先にセの解説で書いた通りの選択肢を選べば良いのだが、傍線部はさらに105~106行目とも対応している(青木方式8)。要は、家族も個人を甘えさせることができるような成熟を持っておらず、その個人が「自分」で立ち直ることを「期待」しているだけだと言っているのだ。つまり74行目にあるように「甘えるーしかる」ことしかできていないわけである。これに合うのはe。

 

《問5》講義で言ったとおり、傍線部が対応している箇所から(青木方式8)導けば良い。

 

《問6》

aそもそも本文で「自立」も色々と言っている時点で(問5のオ参照)解決策ではないし、本文のテーマは「『ひきこもり』問題」の改善ではない。

b「甘え上手」はひきこもらない。

c「逆転」ではなく「混同」。(問4のス参照)

d書いていない。ちなみに父性の説明は【イメージチャート】や【ざっくり言うと】参照。

 

《問7》

【解答例】望ましい親子関係は、互いに依存を引き受けられる成熟度があることも意味するから。(39字)

 

読みながら青木方式⑦でポイントがつかめたかどうか。また波線部Aは64~65行目と神経衰弱(青木方式⑧)できる。そこから、望ましい理由が「甘え上手」=「『成熟』した対象関係」=傍線部クの内容(68~69行目)であることが分かる。ここをコアとしてラフをまとめれば良い(青木方式㉚)。今回は字数が少ないのと、11段落に材料が揃っているので青木方式㉝(あるいは127ページのような字数増やし)は必要ない。

 2018-01-01 21.36.00

お疲れ様でした!!最後まで頑張れ!!よ!!頑張らないと「射殺しますよ」(笑)