【要約】
社会は、人々がそこで生きていく生活の舞台であるがゆえに、われわれのふるまいの集積と言えるが、ふるまいには多くの前提が含まれているために、社会もさまざまな前提を織り込んでいるということになる。それは事実と肩を並べて、社会的現実をかたちづくるが、これは宗教に特有とは言えない。なぜなら宗教の主要なモチーフは「信じる」ことであり、事実と同様のことと考えられて、誰もがそれを疑わず、社会的現実を構成している行動の前提は、「信じる」こととは異なるからだ。宗教は「必ずしも自明でない」ことがらを信じる点で、大きくことなる。しかし宗教は、こうした各文化集団、民族のアイデンティティを形作っている多くの隠れた前提の違いが引き起こす、民族間や文化集団間の抜き差しならない争いを解決する方法の一つでもあった。古代宗教は、社会を再組織するための、より高次の新しい前提を人々に信じさせることで、異なった民族・文化に属する人々が平和に共存するという深刻な課題を解決しようとしたのである。またこれが仏教やキリスト教のような、普遍宗教が求められた動機でもあった。
【問7】異なった民族や文化集団が共存する社会へと、社会を再組織するのに、古代宗教はより高次の共通の新しい前提を人々に信じさせた。
《復習問題》
テキスト本文55~56行目(問4解答箇所)に「彼らと前提を~線分を引いてしまった」とあるが、なぜ「外の世界から訪れた人物(宗教学者)」は、伝統社会に住む人々と自分たちの間に宗教上の「区別の線分」を引いたのか。その理由を50字以内で説明せよ(㊟解答例は最下段。スクロールして確認のこと)。
《解答例》
伝統社会が、宗教と同じく神や霊の観念を持ち、しかもその信仰の対象が自分たちのとは異なっていたから。(49字)
《採点ポイント》「信仰の対象が自分たちのとは異なっていた」OR「伝統社会のふるまいが宗教儀礼に見え、しかも信仰の対象が違った」というような内容があればOK。