2015第1学期『青木邦容の基礎→標準現代文』第9講鈴木博之「都市のかなしみ」要約&記述解答例&復習問題

【要約】

「復元」と「復原」は、前者が保存から一歩進んで、失われたものをよみがえらせることであり、後者が過去の建築遺産を保存してもとに戻すことである点で両者は異なる。その一方で、復原も復元も、歴史を重要なものと考えているという、そして同時に歴史をどのようなものと考えているかを示す態度表明であり、近代的な歴史意識の産物である点で共通点も持つ。しかし、前者は、失われてしまった建物などを、さまざまな資料や証拠から類推して作り上げるという点で問題を抱えている。それは、類推であるにも関わらず、復元がレプリカだという意識の低さも相まって、あたかもそれが歴史的事実のように受けとめられがちであるという点である。その意味で復元は、大局的に見れば意図的な歴史の演出であり、創作である側面があることは否めない。たとえそれが歴史の理解を助け、学術上の研究成果を活かすという目標を掲げたものであっても、復元遺跡や復元建造物がにわかに客観性を帯び、あたかもそれらが歴史的事実のような存在になるのは、やはり問題である。せめて、復元案がどのような研究者や建築家の手になるものであるかを、はっきりさせ、あくまでそれが一つの活動であり、創作活動であることを示すことで、そこを訪れる人々も自分たちで考えながら検証したり、自分なりの復元を想像したりできる余地を残すべきである。そうでなければ、復元はかえってわれわれの歴史的想像力を衰退させる危険性がある。

 

【問7】

我々の歴史的想像力を衰退させるほどの客観性を帯び、歴史的事実であると誤解される。

(別解)類推が入っていることを忘れ、客観性を帯びた歴史的事実であるかような存在になる。

 

《復習問題》テキスト本文139~140行目「実物大に建てられる復元物については、考証者名あるいは設計者名を添えておくべきであろう」とあるが、その理由を筆者はどのように考えているか。90字以内で答えよ(解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答例》

復元は一つの仮説であり、一種の創作活動によって作られたレプリカであるという理解をそれを見る人に持ってもらうことで、それが歴史的事実であるという誤解を与えないようにするため。 (86字)