2015第2学期『現代文読解』第9講日野啓三「東京の謎 眼に見えぬ濃密な感触」要約&漢字解答&記述解答例&復習問題

【要約】

東京の東京性は、その都市の情報の密度とそれがもたらす緊張度にある。その感触こそが現代であり、その凝集点が本当の現代都市である。そこでは情報が我々の感覚と意識下を刻々に直撃し、密かに通じ合い、意識の微細化と拡大を通して、常識的理性を素通りし、我々の現実感の根本を変えつつもある。そしてそうした高度情報の集中点東京は、今、私の原始的なアニミズム心性を徐々に蘇らせはじめているように思えてならない。

 

【問1】

ア組成 イ過剰 ウ林立

 

【問4】(解答例)

東京は、地方都市とは異なり、情報が集まり、それが新たな形として放出されていくといった、その情報の密度が異なるということ。(60字)

 

《復習問題》

次の中から本文の趣旨に合わないものを一つ選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

イ 眼に見える部分で比較すれば、東京も地方都市もそう大差が無いが、東京は知らず知らずのうちに人々の意識を刺激して止まない独特の濃密感を生み出している。

ロ 正月とお盆の東京が印象的なのは、その時だけ夾雑物が取り除かれ、東京の持つ混沌とした世界がはっきりと目に見えるように単純化され、形として姿を現すからである。

ハ 東京はニューヨークやベルリンと同じように、おびただしい情報量が生理的な感触に通ずるような感覚を生み出し、人々の意識に直接働きかける力を内に潜めている都市である。

ニ 我々の意識がこれまでと違い、生きもののように外的世界を感じ取ろうとする現代において、東京は正に時代のあり方を象徴する都市となっていると言えよう。

ホ 東京という都市に潜む多様な情報に興味を向ければ向けるほど、われわれの感覚は病的と言える段階に達して、この複雑で矛盾に満ちた都市のあり方こそが真の現代都市の姿だというなげやりな想念に達する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

2015第2学期『青木邦容の基礎→標準現代文』第8講重田園江「ナウシカとニヒリズム」要約&復習問題

【要約】

ニヒリズムは一般的には、世界の悲惨さに直面するが故に生を浪費する厭世主義的態度や刹那主義的快楽主義的態度のことだと考えられている。しかし、本当はニヒリズムは、無を認めることで生の意味を否定する態度ではなく、むしろ無を認めることを避け、現実から目を逸らしたまま生の意味を肯定できる場に止まろうとする態度ではないか。そのことを気付かせてくれたのは「風の谷のナウシカ」である。物語の中でナウシカは何度も「虚無」と対決し、それに抗う。彼女は世界の悲惨さと直面する体験をしながら、世界の外側に苦しみの根拠を求め「意味」を捏造することや、現実を忘却する「楽園」に逃げ込む態度を拒絶する。こうした現実世界を見ないですます態度はニヒリズムの本質であると言えるが、これは私たちの日常に遍在し、私たちの心にするりと忍び込む危険性を併せ持つ。それを一九世紀末に訴えようとしたニーチェの良き理解者宮崎駿は、「風の谷のナウシカ」という戦いの寓話の中で、ニヒリズムに抗する物語を再び語ったのだ。

 

《復習問題》

テキスト本文79行目にある「人が宗教にすがり来世での救済を求める」とあるが、このような態度を本文の筆者の主張に即して説明した箇所を、次の文に当てはまる形で30字以内で抜き出せ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

◯[     30字以内     ]態度。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

世界の外側に苦しみの根拠を求め「意味」をねつ造する

2015第2学期『現代文基本マスター』〈本題〉6 山竹伸二『「本当の自分」の現象学』要約&復習問題

【要約】

人間が自己価値を求める欲望を有し、複数の分裂した欲望を抱えた存在である以上、自己了解によってある欲望に気付かされ、それが「本当の自分」の欲望であるかのように見えても、それに反する欲望に気付かされた途端、どちらが「本当の自分」の欲望であるのか混乱してしまう。しかし、そもそも「本当の自分」とは、事後的に想定された自己像であり、客観的に存在することはない。したがってそれに執着することは、かえって自己了解によって得られるはずの、自らの意志で行為を選び取るという自由の意識を喪失することになる。ハイデガーは人間のあり方の本質契機として「情状性」「了解」「語り」という三つを取り出した。これは人間が気分を了解しつつ可能性をめがけるような存在であることを示しているが、まさに人間は、その都度の気分を了解することで、自分の欲望や不安に気付かされる存在なのである。そしてそれは、人間が単に自己を知ることが出来るというだけでなく、それによって自らの可能性が開示され、その可能性をめがけて生きる存在であるということも示している。

 

《復習問題》

テキスト本文64行目「人間は、その都度の気分を了解する」とあるが、筆者によれば、人間は「その都度の気分を了解する」ことで、どういうことを得るというのか。次の文の空欄に当てはまる表現を、四字以内で本文から抜き出せ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

◯自らの[   ]に気付かされ、行為を選び取ることができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

可能性

2015第2学期『センター現代文』第7講小林秀雄「鐔」要約&漢字解答&復習問題

【要約】

応仁の乱を境にし、太刀が打刀、つまり凶器に変じると同時に、そしてその一部である鐔も変化した。その鐔は実用本位のものに変わりつつも、またそこに平常心や秩序、あるいは文化を捜さねばならぬ人心の動きが影響し、鐔は単なる凶器の一部分品ではなくなり、やがては名工と呼ばれる鐔工が、様々な模様を鐔に施していく。鐔好きの間では、そうした鐔は信家や金家と相場が決まっている。どうしてそれらは、それほど人を惹きつけるのか。それは観念ではなく、眺めていれば鍛えた人の顔も、使った人の顔も見えてくるような風にある。そうした鐔の模様には、されこうべの他に五輪塔やら経文やらが多く見られるが、これは仏教思想の影響によるものではない。戦国武士達の日常生活に糧を与えていた仏教を理解するには、彼らの感受性を捉えなければならないが、説教琵琶のような当時の生活を反映した文化に触れることで、それが解ってくるような気がする。鐔は、平和な時代が来ると金工家が腕を振るう場所になった。しかしそこには面白さはなく、実用と手を握っているごく僅かな期間の鐔こそが興味深い。戦が無くなり、地金の鍛えもどうでも良くなって来れば、鐔の装飾は空疎な自由に転落する。鉄の地金に、鑿で文様を抜いた鐔を透鐔と言うが、この鐔の最初の化粧は、鐔そのものの堅牢と軽快があっての美しさである。ところで、高遠城址の桜を見に出かけた際に、茅野から杖突峠を越えて行く道にある諏訪神社の上社で、白鷺と五位鷺を見たが、その姿に鶴丸透の発生に立ち会う想いがした。

 

【問1】

ア 同僚 ①官僚 ②治療 ③受領 ④丘陵 ⑤清涼

イ 空漠 ①束縛 ②爆笑 ③砂漠 ④幕府 ⑤麦芽糖

ウ 伴奏 ①同伴 ②繁華街 ③搬入 ④頒布 ⑤重版

エ 空疎 ①疎遠 ②租税 ③措置 ④阻止 ⑤塑像

オ 森(深)閑 ①喚問 ②緩和 ③勇敢 ④歓喜 ⑤閑散

 

《復習問題》

《復習問題》

テキスト本文42~43行目に「信家も、これほど~惹きつけるか」とあるが、筆者によればそれはどのような理由からだと考えられるか。最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

①武田信玄の鐔師であった信家は、信玄の一字である「信」という字を貰ったという伝説が語られるほどの鐔師であったから。

②信家の鐔は瓢箪であり、何か明るさを醸し出していると共に、鐔の表情から信家の作であるのがはっきり分かるものだったから。

③鐔の模様が観念を離れた形で、それを眺めているだけで鍛えた本人である信家や、使った人の顔が見えてくるようなものだったから。

④乱世において、人が平常心を保つために何か一種明るい感じを鐔に求めたのに対し、信家がそれに見事に応えているから。

⑤花は桜という平凡な文句に敵し難いのと同様に、鐔は信家であるという評価は容易に覆しがたいと人々に思わせるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

2015第2学期『現代文読解』第8講木岡伸夫「風景の中の時/時の中の風景」要約&記述解答例&復習問題

【要約】

年をとるにつれ、なぜ時の経つのが早く感じられ、しかも年をとった今、そのことが昔ほどは気にならないのはなぜか。そうした問題を考える際に「時間」を主題化することは、時間は言挙げされない仕方でしか経験されないという性格から、そのあり方そのものを変えてしまうことになる。したがって直接に時間を問うのではなく、時間がそれに即して現象する「記憶」や「風景」といったものを取り上げるしかない。集団の共有する物語としての風景は「原風景」と呼ぶべきもので、それは同時に時間的にして空間的なものである。したがって時間への問いと風景への問いは同じになる。その「原風景」は、かつてあるものが存在したことの記憶と、それが現に失われつつあるか、既に失われたという事実が結びつくことによって生じる点で、その失われゆくものとのつながりは、〈距離〉を生み出し、その距離が、風景の中の時の移ろいの早さとして実感される。しかし濃密な今の連続を生きる若者には、風景の中の時は常に現在に連続しているために、過去との間にそうした安定した距離を構成する余裕がない。その危機意識が時の経過が早まるという驚きを作りだしている。しかし年齢と共に、過去を瞬時に取り戻すことができるようになると、その危機が顕在化しなくなり、無常の感は薄れていく。それが年を取るにつれ、時の速さが気にならなくなる理由でもある。

 

【問3】(解答例)

年をとるにつれて、時の経つのが早く感じられるようになる。(28字)

 

《復習問題》

テキスト本文87行目の「距離」には〈 〉が付けられており、他の箇所の「距離」と意味を異にして用いられている。その意味の説明として最も適当なものを次の①~⑤のうちから選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

①哲学的風景論の構造を持っていることを意味する。

②距離が、時間的にして空間的であるということを意味する。

③現代人の原風景までの距離が遠いことを意味する。

④自らの生活の中の世界が風景であることを意味する。

⑤記憶の中で失われていくものへの愛惜を意味する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

⑤(ここでの「距離」は「離れを距ぐ」と説明されている。原風景が原風景足りうるのは、記憶の中でそのものとのつながりが生きており、それが失われていくことへの「もったいなさ」「惜しみ」が生じること(=離れを距ぐ)からであり、そういう心理から時間が経つのが速いという実感が生じる。)

(システム不具合のため再投稿)2015第2学期『センター現代文』第1講佐々木敦「未知との遭遇」要約&漢字解答&復習問題

㊟一部のスマートフォン、PCで閲覧できないという原因不明な不具合が報告されましたので、再投稿します。

【要約】

人類がそれなりに長い歴史を持っているために、自分が考えたことを既に考えた誰かが必ずといっていいほど存在する。しかし我々は過去の全てを知っている訳ではないので、自分ではオリジナルだと思ってリヴァイバルしてしまうことがある。このような問題については、自力で考えてみることと、過去を参照することをワンセットでやることという方法で対処すれば良いが、意識せずして過去の何かに似てしまっても、その事実を認めることが必要である。しかしネット以後、そういう「歴史」を圧縮したり編集したりすることがやり易くなり、「歴史」全体を「塊」のように捉える考え方がメインになってきた。その弊害は「意図的なパクリ」として起こってきたが、受け取る側のリテラシーの低さゆえに、オリジナルとして流通してしまうこともあるために、啓蒙によるリテラシーの向上も必要かもしれない。しかし、ネット上では啓蒙のベクトルがどんどん落ちていく。したがって私はやはり、未知なるものへの好奇心/関心/興味を刺激する立場にいたいが、今ではそれも受け手のリテラシーを推し量る必要があるので困難である。

 

【問1】

(ア)垂れる ①心酔 ②睡魔 ③無粋 ④自炊 ⑤懸垂

(イ)大概  ①該博 ②弾劾 ③形骸 ④感慨 ⑤概要

(ウ)潤沢  ①循環 ②湿潤 ③殉教者④巡回 ⑤純度

(エ)端的  ①丹精 ②枯淡 ③大胆 ④発端 ⑤探求

(オ)奏でる ①捜査 ②双眼鏡③一掃 ④奏上 ⑤操業

 

《復習問題》

テキスト本文4行目「ネット上では、啓蒙のベクトルが、どんどん落ちていくこと」とあるが、どうしてこのようなことが起こるのか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

①人類は、長い歴史を持ち、その結果新しい発想や知見が生まれにくくなっているために、「教えてあげる君」は「教えて君」に使い古された情報しか与えられないから。

②「教えてあげる君」という、自分より知識や情報を持っていない方に向かう種類の人間と自力で考えない「教えて君」がネットの普及で出会う機会が増加したから。

③自分で調べればすぐにわかることを他人に質問する「教えて君」が、「教えてあげる君」に、ろくに過去の知識を使って考えることもせず簡単な質問ばかりするから。

④「教えて君」も「教えてあげる君」も、自分が知らないことを新たに知ることができる方向に向かうべきであるのに、あえてそうせずに互いに依存し合っているから。

⑤「教えてあげる君」は、自分で調べればすぐにわかることを敢えて聞く「教えて君」に対して啓蒙を試みるが、「教えて君」のリテラシーが低いために失敗してしまうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

2015第2学期『青木邦容の基礎→標準現代文』第7講熊田孝恒「マジックにだまされるのはなぜか」要約&文学史暗記法&復習問題

【要約】

マジックは、マジシャンと観客の間のコミュニケーションによって成立するが、そこにおける重要な人間の特性は、人間が他者の心を理解し予測することである。人間は成長するにしたがって、他者の感情や意図を理解する機能としての「心の理論」を身につけていく。この心の理論を駆使してマジシャンは観客の心の状態を想像し誘導しようとするが、観客も同じくそれに引っ掛からないようにする、という高度な駆け引きを必要とするエンターティンメントがマジックである。しかしながら観客は、そこで完璧にだまされることを楽しむというきわめて特殊な心理状態を経験する。観客がだまされることを楽しむ人間のメカニズムは分かっていないが、そのヒントは脳の活動にある。基本的にはマジックを見た時に起こる脳の活動は、動作が物理的な制約には反していないが、期待とは反した行動を見た時の脳の活動と類似している。これらの脳部位は、既存の知識から導かれる期待に反するようなことを経験した時に活動する。ここから脳は、生体にとって予想に反する出来事を、より的確に検知した方が生存に有利であるため、それを見つけることを楽しく感じるようにプログラムされている可能性があると考えられる。その点で、マジックを始めとするエンターティンメントの楽しみの根源が人間の生存にかかわるメカニズムに関連するかもしれないという仮説は、興味深い。

 

【問8 参考資料ー文学史暗記法】

芥川龍之介(前期作品)

◯(暗記法)

龍の 鼻 毛は ぶっとく チ ラ ホラ、 彼の いもうと ハンカチ トス 

①龍の 芥川龍之介 ②鼻 「鼻」 ③毛は 「戯作三昧(げさくざんまい)」 ④ぶっとく 「舞踏会」

⑤チ 「地獄変」 ⑥ラ 「羅生門」 ⑦ホラ 「奉教人の死(ほうきょうにんのし)」 ⑧彼の 「枯野抄(かれのしょう)」 ⑨いもうと 「芋粥(いもがゆ)」 ⑩ハンカチ 「手巾」 ⑪トス 「杜子春(とししゅん)」

芥川龍之介(後期作品)

◯(暗記法)

龍は 藪 玄さん 信 州 カッパは アロハ

①龍は 芥川龍之介 ②藪 「藪の中」 ③玄さん 「玄鶴山房(げんかくさんぼう)」 ④信 「蜃気楼(しんきろう)」⑤州 「侏儒の言葉(しゅじゅのことば)」 ⑥カッパ 「河童」 ⑦アロ 「或る阿呆の一生」 ⑧ハ 「歯車」

 

《復習問題》

テキスト本文19行目「行動から意図を正確に推定すること」とあるが、そうするためには具体的にどのような能力が必要か。本文から25字以内で抜き出せ(句読点含む)。(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

相手の心で起きることを、自分のなかで模擬する能力(24字) (24~25行目)

 

 

 

 

 

 

 

 

    

2015第2学期『現代文基本マスター』〈本題〉5鷲田清一「じぶんの内とじぶんの外」要約&復習問題

【要約】

私たちは物事の認識に関わる区分けの仕方を他のひとたちと共有している場合に、自分を「ふつう」と感じる。その共有している意味の分割線にわたしたちは固執するが、それはそうした分割線に自分を挿入することでしか、自分自身を感じ理解することができないからだ。わたしはだれであるかということは、わたしはだれでないかということと表裏一体になっている。したがってその差異の軸線が共有されていないものは、わたしたちではないもの=「ふつう」でないものとして否認される。この点で、わたしたちが自分の存在にかたちを与えているプロセスは政治的なものだとも言える。そして〈わたし〉を形作っているそのような差異の軸線を「自然」的なものとせずに、その都度具体的なコンテクストに即して検証していくことでしか、「わたしはだれ?」という問いには答えることができない。

 

《復習問題》

テキスト本文5行目「意味の分割線」を、「わたし」を理解するためのものとして具体的に説明している箇所を30字以内で抜き出し、その最初と最後の3文字(句読点含む)を答えよ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

わたし~の軸線(33~34行目)

2015第2学期『現代文読解』第7講佐々木毅「学ぶとはどういうことか」要約&漢字解答&記述解答例&復習問題

【要約】

人間社会に巣食う不正や暴力、欲望の暴走、予測不可能な「不安定性」といったものに対する嘆きや悲しみ、やり切れなさが大思想のエネルギー源になった。同時にそうした空しさややり切れなさを生み出す人間的現実を作り出しているのも他ならぬ人間であり、人間はそうした現実に疑いを差し挟み、新しいことを試み、それを通して人間世界を「不安定」にし、それを作りかえることで文明を作り上げてきた。その文明では日々さまざまな問題が生じるが、そうした「不安定性」を安定させるために「学ぶ」ということが継続的になされなければならない。なぜなら、そうした問題に対する対処や解決は、常に具体的であると共に、暫定的だからだ。こうした「学ぶ」行為は、究極性も絶対性もなく、あるのは生命の働きに依拠した継続性である。それはつまり人間が、新たな可能性を切り拓いていく「中間的」存在、「より適切なもの」を「選択し続ける動物」であることを意味する。したがって絶対的・究極的境地には到達しえないが、少なくとも自由を有する存在として、「人間らしい」「人間的」という大切な様相がそこに見られる。

 

【問1】

ア自明 イ統御 ウ膨大(厖大) エかいり オごびゅう

 

【問5】

人間は新しい企てを始める能力を持つため、現実の様々な問題に対し、新しい工夫を試みて人間世界を作りかえていくことができる。(60字)

(別解)様々な問題に対して、人間は新しいことを選択し、企て、それらに具体的に対処することで、人間世界を作りかえていけると考える。(60字)

 

《復習問題》

テキスト本文1行目に「人間社会に巣食う不正や暴力、欲望の暴走、予測不可能な『不安定性』といったもの」という表現があるが、これを文中に登場するプラトンは、具体的にどのように説明しているか。その説明を含む一文を抜き出し、その最初と最後の5文字(句読点含む)を記せ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

プラトンは~場をとる。(24~28行目)