2013第1学期『青木邦容の現代文』第9講分 山本健吉『日本の庭について』要約

ヨーロッパの庭は、彫刻や絵画や建築や、ヨーロッパ流の芸術理念を作り出しているそれらのジャンルに準じて、自然を造形し構成し変容せしめようという意志をもって創造された。それに対して日本の庭は、生花や茶の湯、連句などの日本の芸術に共通して見られる一期一会の精神に準じ、そこにはヨーロッパの庭に見られる永遠の造型を目指そうという人間の意志は感じられない。日本の庭は変化こそを命とするのである。しかし日本の代表的な庭園とされる龍安寺方丈の石庭は、ヨーロッパ風の芸術理念から言っても、何ら躓きとなる要素を持っていない。また日本の多くの庭に見られる、日常生活において人をくつろがせ解放し、その嬉戯の心をみなぎらせる要素もない。その点で鑑賞者に緊張感を与える龍安寺の石庭の非日常性は、それが日本の庭の代表などではなく、例外的存在であることを示している。