2015第2学期『現代文基本マスター』第9~12〈評論〉 長谷川堯『吊り下げる家』要約&記述解答例&復習問題

【要約】

この地球上に実現されるあらゆる生物の巣は、人間の建築も含めて、全て何かの形で重力の支配に逆らう、あるいはその支配を何らかの形で体現するかのように作られている。ところが、私たちはこの基本的事実を忘れて生きている。それは人間の建築史上、新しい構造が開発されたことで建物を大地の上に実現する緊張感や恐怖心が薄らぎ、建築が機械的な作業になったことにも見られる。それは家を高く広く大地の上に築き上げる企ての中にあった、ある種の“祈り”に似た敬虔な気持ちが希薄化したことでもある。それに対して他の生物の営巣は、引力に対して真剣に、飾り気なく、直接的に対処している。それにつけて、現代の建築はもっと素直に重力の法則に従いながら、必要な空間を確保しても良いのではないかと思わざるを得ない。クモの網糸や懸垂営巣をする小鳥たちは、重力圏における特殊な空間領域を構築しているが、自然風景のなかでいかにもさりげなく同化している。

 

【問5】(解答例)

機械的に作る近代建築とは異なり、重力の法則に従いながら真剣にそれに対処する建築。(40字)

 

《復習問題》

テキスト本文60行目「散文的な状態」とはどのような状態を言うのか。次の①~⑤の中から適切なものを一つ選べ(解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

①建て前の儀式が簡素化、省略された状態。

②建築を作ることが簡単になった状態。

③大地との葛藤のドラマを喪失した状態。

④建築することに意義を見いだせない状態。

⑤人間の建築が他の生物の営巣に劣っている状態。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

③(ちなみに「散文的」という言葉は「詩情(詩の趣を感じる、詩の面白さを感じる)に乏しい」という意味の他に、「味気ない」「面白みがない」「風流を感じない」という意味も持つ。)