【要約】
欧米の人権概念の背景には、キリスト教の思想に基づいた、神の目を意識しつつ自らの言動を律するという考えがあった。日本はこのような唯一・絶対神を基本に据えた人権論は発達しなかったが、その代わりに家族や共同体の目が、神の「目」に匹敵するものとして意識され、社会秩序の調和が図られた。しかし、日本においても欧米においてもこのような調和のシステムが崩れつつあり、ことに日本では家族や共同体の「目」という制約原理のないままに「個」を尊重することが民主主義の精神であると強調され、制約の無い「個人の尊重」がそのまま「個人の放縦」と化してしまった。「個人」の存在は軽く見るべきものではないが、「個人の尊重」のみを強調してきた、戦後における人権観念の問題点をもう一度論議すべきである。
【問5】(模範解答以外の解答例)
家族や共同体の目という個人に対する制約原理を無くしたまま、「個」の尊重が、民主主義に沿うものと強調された結果、個人の尊重と私利私欲の区別ができなくなったから。
《復習問題》本文第8段落文末に「戦後における人権観念の基本的問題点がここに存するように思われてならない」とあるが、「ここ」とはどこか。それを表す表現を本文から15字以内で抜き出せ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。
《解答》
制約のない「個人の尊重」