【ストーリーOUTLINE】
亡き妻の三回忌も近いのに、日々の暮らしで精一杯な大刀老人は、墓をたててやることもできないことを気にするが、かといって薄給の息子を当てにすることもできず、とうとう先祖伝来の懸物を売ることを決心する。この懸物に別段の思い入れも無い息子は憎らしいほど簡単に、懸物を売り払うことに賛成する。しかしいざ売ろうと懸物を持って出かけたものの、大刀老人が払うほどの敬意をもって高い評価をしてくれる道具屋もなく、また息子の課長の友達という人の所へも持ち込んだが、その目利きの無さに怒って老人は懸物を持ち帰ってしまう。ところが、三回忌もあと一月後という頃、偶然の伝手からある好事家の手に渡ることになり、老人は立派な石碑をつくれたばかりか、余りの金を郵便局に貯金することもできた。月に一、二度は出して眺めていた懸物だから、売り払った後も気になって、もう一度見せてもらいに行ったところ、大事にされていることがわかり、老人は安心し、うれしく思うのだった。
【問1】1 工面 2 融通 3 ろくしょう 4 らっかん 5 透き
【問8】(解答例)先祖伝来の大切な一幅が心配だったが、大切に壁に懸けてあるのを見て安心した。
(別解)好事家が懸物に尊敬を払うかのように大切に壁に懸けていたので安心(安堵)した。