【解説講義補足】
《問5》
まず【設問チェック】しましたね。これで設問に答えるには、本文から「妖怪が棲むこと」の条件は何か?-ということが読解POINTのひとつだということはつかめています。
ここから設問には、本文から探し出す、その「妖怪が棲むこと」の条件を「そのような空間」が持っていないから(「そのような空間」にないから)というように答えれば良いということがわかりました。
さて、まずは本文読解の時に言った、読解の法則にしたがってその「条件」を探しましょう。
それは-25行目-「闇」の空間・「奥」の空間でしたね。
また、傍線部内の「そのような空間」とは、第8段落の内容から『「開発」によって作り出される空間』(=陰影を欠いた均質的な空間/聖なる固定点がどこにあるかはっきりしない空間/「奥」や「後ろの山」がない空間)であることはわかっています。
これらをまとめたものは35行目「人間の住む空間、人間の支配する苦空間」というように説明されています。
そして講義で説明したように【設問チェック】→【読解】のプロセスで最も見落としてはならないのが『「光り」の領域の増大に反比例して、妖怪の空間は縮小していったのである』という箇所です。
ここは【設問チェック】で考えた、『「妖怪が棲むこと」の条件を「そのような空間」が持っていないから(「そのような空間」にないから)』というイメージに近い内容を持っています。
以上のようなポイントをまとめて簡単な解答を考えてみます=「ラフ」の作成。
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「妖怪の空間が縮小」したのは「『「光り」の領域の増大』が原因→ということは「妖怪が棲むこと」の条件は「闇」(の空間)が無いからだ。
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どこにないのか?→「そのような空間」(傍線部)にない。→「そのような空間」とは何か?→「開発」によって、作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間。
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簡単まとめてみよう(ラフ)=「開発」によって、作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間は「闇」を持たないから。(46字)
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字数が(当然)不足(笑´∀`)
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理由説明問題で「字数不足」の場合は、先に本文内でチェックした【読解のPOINT】箇所から、次に示す『記述のツボ』にあるような材料を拾って、ラフと合成すれば簡単に記述の解答が書けます。
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『記述のツボ』(字数が不足したら)理由説明問題は、「直接理由」の他に①間接理由(「直接理由」の『理由』)②傍線部の内容説明③「直接理由」の内容説明―を適宜プラス!!
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(参考)「直接理由」とは?「間接理由」とは?
たとえば「彼が学校を休んだ理由」を求められて、その答えが「風邪を引いたから」だったとします。
この「風邪を引いたから」が、学校を休んだ「直接理由」です。
もしそれで説明不足というなら、次に「間接理由」をプラスします。
「間接理由」とは、「直接理由」の「理由」のことです。
この場合なら、「なぜ風邪を引いたのか」、その理由に当たるものをプラスすれば良いのです。
仮にそれが「裸のまま寝てしまったから」ならば、それが「間接理由」に当たります。
これらを合成するとー
〇彼は、裸のまま寝てしまい、風邪を引いてしまったから。
となりますね。
さらに、もしこれでも字数不足に陥る、あるいは「間接理由」が本文に見当たらないなら、先ほどの『記述のツボ』に書いたように、さらに「裸で寝てしまった理由」を付け足すか、あるいは「傍線部」の内容説明を付け加えます。
今回の傍線部が「彼が学校を休んだ」というものなら、これを説明したものを先の理由に付け足せば良い。
たとえばー
〇彼は、裸のまま寝てしまい、風邪を引いて学校にいくことが出来なくなってしまったから。
となります(二重傍線部に注目。ここが傍線部「学校を休んだ」の言い換え=内容説明です)。
これでもダメなら(あるいは以上に述べた材料が本文に見つからない、あるいは作れない場合は)、『記述のツボ』の③を使って「直接理由」の説明を付け加えます。
今回の場合なら「風邪を引いた」ことを説明したものを付け加えるのです。
たとえばー
〇彼は、裸のまま寝てしまい、風邪を引いて熱が高く、また咳もひどく、学校にいくことが出来なくなってしまったから。
となります(二重傍線部の部分が、「風邪を引いた」という直接理由の内容説明になっていることに注目して下さい)。
このように解答の字数を増やそうと思えばいくらでも増やせます。
しかし「変な材料」を本文から抜き出して「適当」に付け加えると、元の答えを台無しにしかねません。
『記述のツボ』を意識して、少しずつアレンジしていくのがコツです。料理の味付けと同じです(笑)
味が足らないからといって調味料ドバドバドバぁ~はNGなのです。
では、先ほどのラフを『記述のツボ』で「料理」しましょう!!
(ラフ)=「開発」によって、作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間は「闇」を持たないから。(46字)
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まず「間接理由」があるか?→この場合なら『「闇」を持たない』理由→すでに「ラフ」の中に『「開発」によって』とあるので新たに付け足すものがない→『「光り」の領域の増大』はどうか?→ダメではないが、「ラフ」の中の「開発」や「作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間」の中に「明るい電灯が大都市から地方都市、住宅の居間からその他の部屋へと普及していく」=『電灯が「闇」を克服する』(24行目、29行目)という内容が意味的に含まれているので、「ラフ」とダブってしまうので避けた方が良い。
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ならば『記述のツボ』②の傍線部の内容説明はどうか?
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(傍線部)「妖怪が棲むことは容易なことではない」=(27行目)「妖怪は追放されてゆくことになった」(31行目)「妖怪の空間は縮小していった」などが見つかる・・・が、これらを使うと(字数は増えるが)、今回の場合=「そのような空間に妖怪が棲むことは容易なことではないのは明らか」な理由としては弱い(もちろん他に材料がない場合、あるいは他に材料を探す時間がない場合はこれを合成するが)。
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さらに『記述のツボ』③「直接理由」の内容説明はどうか?
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「ラフ」の『「闇」を持たないから』の言い換え、説明は本文にないか?
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「ある!!」→(29~30行目)『電灯が「闇」を克服するということは~消滅してゆくことでもあった』の次に「つまり」とあり、その内容を説明していることになる。
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『「闇」から紡ぎ出されるうわさ話や物語が人々の周囲から消え失せていったわけである』がそれだ!!
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これを先ほどの「ラフ」に合成して全体を整える。
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「開発」によって、人間の住む空間、人間の支配する空間に変貌した均質空間には「闇」がなく、そこから妖怪にまつわるうわさ話や物語が紡ぎ出されることはないから。(77字)
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完成した!!
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㊟模範解答の「コスモロジーが共有されにくい」という指摘は、必ずしも解答に入れる必要はありません。「うわさ話や物語が定着せず」という内容が、入っていればOKです。