【要約】
世界銀行等の貧困な層の定義は、一日に1ドル以下しか所得のない人が世界中に12億人もいて、75セント以下の「極貧層」さえ6億3000万人もいるというものだが、こうした貧困のコンセプトは、たとえ善意の意図からそれがなされ、一時的に良い政策につながっても原理的には誤っており、長期的には不幸を増大するような政策を基礎付けてしまうおそれがある。なぜなら貧困は、貨幣をもたないことにあるのではなく、金銭を必要とする生活形式の中で、金銭を持たないことにあるのであり、「南の貧困」は、そもそも貨幣を必要としなかった人々が、自然や共同体から引き離され、貨幣やGNPを必要とするシステムの内に投げ込まれてしまった上で、所得やGNPが低いままであることがその原因である。こうした二重の剥奪である〈貧困〉のコンセプトの正しさは、世界銀行等が用いる貧困層の定義よりも、はるかに多くの所得を有するアメリカに、やはり貧困を強いられている人間がいることでも証明される。貨幣からの疎外の前に貨幣への疎外があるために、特に現代の情報消費社会のシステムは、絶対的な必要を更新し、第一次的な剥奪を巨大化、重層化することで、〈必要〉とされる貨幣の数量を巨大化させ、新しく、切実な貧困の形を形成しているのである。
【問2】
貨幣をはじめから必要としていない世界を「所得」の量で「貧困」と定義しているから。 (40字)
《復習問題》
問1 本文25行目にある「貨幣への疎外」の内容を述べている部分を、45字以内(句読点含む)で抜き出し、以下の解答欄に合うように示せ。(㊟解答は最下段なのでスクロールして確認のこと)
[ 45字以内 ]こと。
《解答》
貨幣を媒介としてしか豊かさを手に入れることのできない生活の形式の中に人びとが投げ込まれる(44字)