【要約】
西欧は「個人主義社会」だから西欧には「個」が確立しているが、日本はムラ社会、集団主義社会だから「個」が確立していないと言われるが、実際はヨーロッパ社会ほど、一方で個人主義を唱えながら、他方で国家意識や地方意識が強く、地域共同体や家族という集団の凝集力が高いところはそれほどない。そしてこうした「個」と「集団」の強い緊張が、「公」と「私」の鋭い峻別を生み出している。一方日本では、「私」の世界と「公」の世界の区別が極めて曖昧であり、ヨーロッパでは「公」と考えられる世界へ、日本では「私」が当然のようにはみ出している。これは、日本の「公」が「お上」の観念と同一視されており、「公」は国家的、政治的、官僚的なことがらであるという了解ができあがってしまったことによる。さらに、戦後日本では、戦前の国家主義の反動で、「公」よりも「私」を重視する風潮ができあがってしまっているために、「公」は、個人の感情や個人の利害打算にすぎない「私」に席巻されてしまうということも起きている。
【解説講義補足】
《問5》
①記述問題なので本文を読解する前に「何をきいているのか」をチェックする。
⇓
②『(本来は家の中でしか見られないはずの)「私」の世界の親子関係が、家の外にまで及んでいる(=はみ出している)』ことを説明せよ・・・ということだが、こうした内容に関連すると思われる箇所に注意しつつ本文を読み進む。
⇓
③講義で述べたように、第8段落から、ヨーロッパの子供たちが「公」の世界のルールを重んじているという内容と対比する形で、日本における子供の姿が説明されている。また、(講義では省略したが)11段落に傍線部分と同じ表現を見つけることもできる(→「こうなると、ヨーロッパでは『公』と考えられる世界へ、わが国では『私』がはみだしていく」の箇所)。
⇓
④③で見つけた箇所、及びその前後から問5に使える材料を抽出し、まずは「簡単な答え」=ラフを作成してみる。
⇓
⑤今回は、ラフを作成する際に、どのようなポイントを抽出すれば良いのか。③で発見した箇所に注目すれば、いずれにせよ8~10段落に注目する必要があることがわかるが、さらに正確に、設問でチェックした「『私』の世界の親子関係が、家の外にまで及んでいる」という表現に対応する箇所に注意すると、(講義で説明したように)8段落の「家の中も外も何の区別もなく、甘やかされ」ているという表現が、「『私』の世界の親子関係」=甘やかし、「家の外にまで及んでいる」=「家の中も外も何の区別も」なく・・・という風に対応していることを確認できるので、ここを使って「ラフ」を作成する。
⇓
⑥(ラフの作成)日本では、家の内外に関係無く、親が子供を甘やかしてしまっている状況。〈34字〉
⇓
⑦(字数調整)⑥で作成したラフは、字数が不足している。傍線部内容説明問題で字数が不足している場合は(講義で述べた青木方式を使い)、ラフを詳しく説明するための「根拠」「理由」を本文から探し、ラフに加えるようにする。今回のラフ「日本では、家の内外に関係無く、親が子供を甘やかしてしまっている状況」が「なぜ」翔生じているのか?本文では⑤でチェックした箇所に『「公」の世界のルールというような感覚は極めて薄い』とか『ヨーロッパにおける、家の外は基本的に「公」という感覚とは異なっている』とか『日本的な「公」観からは、家の外へ一歩出ると「公」の世界であるという理解は出てこない』とうように、その理由が説明されている。
これらのいずれかを「根拠」「理由」として⑥で作成した「ラフ」に加えれば良いであろう。
⇓
⑧(完成)日本は、ヨーロッパのような「公」の世界のルールというような感覚が薄いため、家の内外に関係無く、親が子供を甘やかしてしまっている状況。 〈66字〉
(参考・・・別解)「公」の世界のルールという感覚が薄いために、家の内外の区別なく、「私」の世界と同じように「公」の世界でも親が子供を甘やかしてしまう状況。 〈68字〉
上記の解答は、解答にある採点基準と-
①(日本では、)「私」の世界(家の中)と「公」の世界(家の外)との区別が曖昧な状態にある、という指摘
≑ 「家の内外に関係無く」
②「私」の世界(プライべートな親子関係)が「公」の世界(家の外)にまで拡張している、という指摘
≑ 「(日本は、ヨーロッパとは異なり)親が子供を(外でも)甘やかしてしまっている」
③「公」の世界のルールに対する関心が薄い、という指摘
≑ 『(日本は、ヨーロッパのような)「公」の世界のルールというような感覚が薄い』
-というように概ね対応している。
記述が苦手な人は、まずは「簡単な解答」=「ラフ」が書けるようになることを目標としよう!!(その後は【青
木方式】で何とかなります(笑))
《問7》
講義で述べたように、(特に苦手な人や解答スピードを上げたい人は)『中間チェック』利用し、本文を前半と後
半というように分割して、それぞれの情報から選択肢を吟味する。
(講義で説明したように)前半の情報で既に④が×なのは確認できた。後の選択肢はどうか?後半部分を読解後
に吟味してみると-
1たしかに(「公」の世界に出ると、ヨーロッパでは、親は子供に厳しい態度に出るとあるが(6段落)、その理
由は選択肢のように、子供というものが未熟な存在だと考えているからではなく、本文で何度もくり返されてい
たように(=講義で説明した【オタクの法則】を思い出そう!)、ヨーロッパでは「公」と「私」がするどく峻
別され、(家の外は基本的にすべて「公」という感覚を持ちつつ)「公」の世界のルールを重んじているからであ
る(7段落、9段落)。
2「国家のために個人が抑圧された時代を経験した」は、10段落に「戦前の国家主義」とあり、またその反動で
「公」よりも「私」を尊重する風潮になったことが説明されている。またそれに続いて選択肢の後半は11段落
の説明とそのまま合致する。
3ヨーロッパに紛争が多かったことが、個人主義傾向を生んだとあるが、3段落にあるようにヨーロッパで「激
しい国家間抗争」があった歴史が生み出したのは、逆に「国家意識や地方意識」である。「個人主義的傾向」で
はない。
4先に述べたように前半情報で×(講義で述べたとおり)。
5 7段落にあるように、一人前の「個人」として認めてもらえる条件は「公」の世界のルールに反しないこと
であって、選択肢のように「家庭のルール」を守ることは条件ではない。
以上、お疲れさんでした!! 青木の講義情報はこちらをチェック!! → 青木の講義はココで受けられる!!
ついでにテレビにも出てます・・・「今しょ!」の人ほどではありませんが(笑) 一部紹介→ TV