2015第1学期『青木邦容の基礎→標準現代文』第2講菅野道夫「ファジイ理論の目指すもの」要約&復習問題

【要約】

あいまいだからよい最たるものとしての言語の使用が、生きた人間の日々の証であり普遍的な契機だとすれば、人間の日常性はあいまいさによって支えられていることになる。人間の意識の対象世界が無限の奥行きと多様性を見せるのに対して、言語は有限であるために、個々の言語は必然的に広がりを持った領域を受け持たざるを得なくなる。言語はもともと不連続なものであるから、言語による分節化は連続世界の離散化になるが、誰にとっても共通な、確定的部分への離散化が不可能である故に、言語はあいまいさを持たざるを得ないのである。逆に数学世界の二値論理的概念は、〈曖昧性〉を持つ自然言語では表すことができないことを考えれば、自然言語の〈曖昧性〉が理解出来る。そしてその〈曖昧性〉は、思考とコミュニケーションの場で本質的に現象する。もし言語が〈曖昧性〉を持たなければ、思考は前進せず、またコミュニケーションも成立しない。なぜなら、変化する現実世界と時間の流れの中で、双方共に限られた時間の中で行われる動的プロセスだからである。やはり言葉はその〈曖昧性〉ゆえに使用に堪えるものなのである。

 

《復習問題》本文中に登場した「分節化」という表現についての説明として、最も適当な例を次からひとつ選べ。

 

①雑踏の中の人々の会話に耳を澄まし、会話内容を理解しようとする。

②名札に書いてある商品名と、コンピューター上のデータを照らし合わせて在庫チェックをする。

③暴走し、人を轢いてしまった「自家用車」を「殺人道具」と呼ぶ。

④どこからどこまでが自分の仕事の範囲かを決めてから仕事に掛かる。

⑤自然を見て、美しいと感じ、それを詩にして朗読してみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》③ 本来は分類されていない混沌とした世界を認識のために言葉によって分類し、同時に意味を与えること(「青木の現代文単語の王様」(代々木ライブラリー)112㌻参照)。この場合、一般的には「自家用車」と呼ばれているものを、「殺人道具」と呼ぶことで、「自家用車」一般から切り離し=分類し、新たに「殺人」に使われた「道具」という意味を与えた。

2015第1学期先取り学習『センター現代文』第2講リービ英雄「『there』のないカリフォルニア」要約&漢字解答&復習問題

【要約】

四季がはっきりしていることが現実にとっても文学にとっても重要な特徴であり続けてきた日本、そして近年の日本以上に四季の変化が豊かなアメリカ東海岸からカリフォルニアに来て、ほとんど何の変化も見せない、そのコバルト色の空に対して、最初は単純で明快なグッド・フィーリングを覚えたが、やがてスタンフォード大学で日本の古典文学の授業が始まると、事情は一変した。季節の変化など存在しない、コバルト色の空の下で、季節感の細かい変化を表現の軸の一つにした古代・上代の日本文学を講じるのは、あまりにも違和感があり過ぎたのだ。それは、ある種のパニックどころか、「カルチャーショック」より深刻な、一つの虚無感を引き起こした。しかし、カリフォルニアは、現在そこに住む人間にとっては、季節の変化がないという意味でパラダイスであり、20世紀の終わり頃のカリフォルニアに住んでいた人間にとっては、疲労した近代文明の「その次」の生き方を示す、優越感を感じられる場所としてパラダイスであった。いずれにしても『そこにいる』あるいは『どこかにいる』という感覚を全く感じさせないその場所は、ガートルード・スタインの名言の一部を借りれば、まさに「thereのないカリフォルニア」と言える場所だった。このような「パラダイス」では、「枕草子」は教えられない。また、清少納言の「季節批評」は「there」だらけの狭い島国の産物であることが、痛いほど感じた「私」は、この場所には長く止まれないことを強く自覚するのであった。

 

【問1】

(ア)祖先 1組織 2○ 3粗略 4険阻 5租税)

(イ)深刻 1慎 2浸 3親 4辛 5○

(ウ)澄   1澄明 2調律 3眺望 4早朝 5潮流

(エ)先端 1担 2 探 3鍛 4○ 5淡

(オ)浮遊 1誘 2○ 3優 4勇 5憂

 

《復習問題》(㊟解答は最下段なのでスクロールして確認のこと)

 本文51行目『「歴史の終わり」を生きていた』というのは、この場合、どういう意味か。次の中から最も適当なものを選べ。

 

①イデオロギーの闘いとは全く無縁な場所で、ただ富の蓄積だけを考えて生きていたということ。

②自分自身に誇りを持ち、自らの手で歴史を作ろうという気概を持って生きていたということ。

③資本主義対共産主義といった、思想の闘いには全く無関心のままに大学に通っていたということ。

④何に対しても心を乱されることなく、ただ変化のない環境で毎日を凡庸に生きているということ。

⑤季節の区別を知りながら、その情緒を理解しないままに、ただ天気を愛して生きているということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》 ④ (㊟アウトラインは「季節の問題に象徴されるような「悩み事」とは無縁に、ただ変化のない環境で、平穏で変化のない毎日を生きている」ということ。)

2015第1学期先取り学習『現代文読解』第2講内田義彦「読書と社会科学」要約&漢字解答&記述解答&復習問題

【要約】

経験科学は、本来は人間の知恵の一部として、知恵そのものをいっそう豊かするはずのものだったのに、被創造物でありながら自然の支配者であるという人間の意識と、諸文明を支配管理するのが当然というヨーロッパ人の自負が相呼応して生み出された「自然支配」の思想は、当該のヨーロッパを超えて普遍性を獲得し、その中で経験科学は、専門外の人間の知恵と経験を見下すようになってしまっている。それは、科学が、専門学術用語を使用するだけで、“事物そのもの”の学問的に正確な考察と把握=統御が保証されるかのように考え、専門外の素人の日常語を学問から排除しようとすることにも表れている。しかし人類が、現在さまざまな局面で当面している個別的、具体的な事態を有効に補足し解決しうる科学こそ、今必要なのであり、そのためには人間の経験すべてを汲みあげ目的に向かって動員しうる知恵才覚と技術を与えてくれる真の経験科学の創造が必要である。

 

【問1】 ア はぐく イ 普遍 ウ 顕著 エ そこ オ 排他

 

【問4】

専門語を排他的に用い、素人の日常語や知恵、経験を見下す。(28字)

 

《復習問題》(㊟解答は最下段なのでスクロールして確認のこと)

〈問1〉本文13行目「おしなべての被創造物」の「おしなべて」の意味内容として最も適当なものを、次の①~⑤の中から一つ選べ。

①ぼかして ②推し量って ③隠して ④総じて ⑤ひらたく言って

〈問2〉本文14行目『これは、「文明の輝かしい末子であって・・・」』の中の「これ」の指示内容を、端的に言い換えたものを、本文中より四文字で抜き出せ。

〈問3〉本文44~45行目「ようやくこれから一歩を歩みつつあるその段階にあるにすぎません」とあるが、何が

「その段階にあるにすぎ」ないのか。本文中より抜き出せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

《問1》 ④

《問2》人間賛歌

《問3》経験科学

2015第1学期『センター現代文』第1講河合隼雄「イメージの心理学」問1 漢字解答参考

【問1】

(ア)  普遍 ①符合 ②不朽 ③普及 ④負担 ⑤付随

(イ)  幼稚 ①知己 ②誘致 ③遅刻 ④稚魚 ⑤無恥

(ウ) 卑小 ①秘境 ②否認 ③非凡 ④卑近 ⑤避難

(エ) 指摘 ①好敵手 ②摘発 ③快適 ④端的 ⑤水滴

(オ) 排斥 ①敗退 ②廃絶 ③排気 ④背信 ⑤配慮

2015第1学期第2回『Weeklyテスト演習(基礎)①』小松和彦「妖怪学新考」解説講義補足(問5記述問題の説明補足とコツ)

【解説講義補足】

《問5》

まず【設問チェック】しましたね。これで設問に答えるには、本文から「妖怪が棲むこと」の条件は何か?-ということが読解POINTのひとつだということはつかめています。

ここから設問には、本文から探し出す、その「妖怪が棲むこと」の条件を「そのような空間」が持っていないから(「そのような空間」にないから)というように答えれば良いということがわかりました。

 

さて、まずは本文読解の時に言った、読解の法則にしたがってその「条件」を探しましょう。

それは-25行目-「闇」の空間・「奥」の空間でしたね。

 

また、傍線部内の「そのような空間」とは、第8段落の内容から『「開発」によって作り出される空間』(=陰影を欠いた均質的な空間/聖なる固定点がどこにあるかはっきりしない空間/「奥」や「後ろの山」がない空間)であることはわかっています。

これらをまとめたものは35行目「人間の住む空間、人間の支配する苦空間」というように説明されています。

 

そして講義で説明したように【設問チェック】→【読解】のプロセスで最も見落としてはならないのが『「光り」の領域の増大に反比例して、妖怪の空間は縮小していったのである』という箇所です。

ここは【設問チェック】で考えた、『「妖怪が棲むこと」の条件を「そのような空間」が持っていないから(「そのような空間」にないから)』というイメージに近い内容を持っています。

 

以上のようなポイントをまとめて簡単な解答を考えてみます=「ラフ」の作成。

「妖怪の空間が縮小」したのは「『「光り」の領域の増大』が原因→ということは「妖怪が棲むこと」の条件は「闇」(の空間)が無いからだ。

どこにないのか?→「そのような空間」(傍線部)にない。→「そのような空間」とは何か?→「開発」によって、作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間。

簡単まとめてみよう(ラフ)=「開発」によって、作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間は「闇」を持たないから。(46字)

字数が(当然)不足(笑´∀`)

理由説明問題で「字数不足」の場合は、先に本文内でチェックした【読解のPOINT】箇所から、次に示す『記述のツボ』にあるような材料を拾って、ラフと合成すれば簡単に記述の解答が書けます。

『記述のツボ』(字数が不足したら)理由説明問題は、「直接理由」の他に①間接理由(「直接理由」の『理由』)②傍線部の内容説明③「直接理由」の内容説明―を適宜プラス!!

(参考)「直接理由」とは?「間接理由」とは?

たとえば「彼が学校を休んだ理由」を求められて、その答えが「風邪を引いたから」だったとします。

この「風邪を引いたから」が、学校を休んだ「直接理由」です。

 

もしそれで説明不足というなら、次に「間接理由」をプラスします。

「間接理由」とは、「直接理由」の「理由」のことです。

この場合なら、「なぜ風邪を引いたのか」、その理由に当たるものをプラスすれば良いのです。

仮にそれが「裸のまま寝てしまったから」ならば、それが「間接理由」に当たります。

 

これらを合成するとー

〇彼は、裸のまま寝てしまい、風邪を引いてしまったから。

となりますね。

 

さらに、もしこれでも字数不足に陥る、あるいは「間接理由」が本文に見当たらないなら、先ほどの『記述のツボ』に書いたように、さらに「裸で寝てしまった理由」を付け足すか、あるいは「傍線部」の内容説明を付け加えます。

 

今回の傍線部が「彼が学校を休んだ」というものなら、これを説明したものを先の理由に付け足せば良い。

たとえばー

〇彼は、裸のまま寝てしまい、風邪を引いて学校にいくことが出来なくなってしまったから。

 となります(二重傍線部に注目。ここが傍線部「学校を休んだ」の言い換え=内容説明です)。

 

これでもダメなら(あるいは以上に述べた材料が本文に見つからない、あるいは作れない場合は)、『記述のツボ』の③を使って「直接理由」の説明を付け加えます。

 

今回の場合なら「風邪を引いた」ことを説明したものを付け加えるのです。

 

たとえばー

 〇彼は、裸のまま寝てしまい、風邪を引いて熱が高く、また咳もひどく、学校にいくことが出来なくなってしまったから。

 となります(二重傍線部の部分が、「風邪を引いた」という直接理由の内容説明になっていることに注目して下さい)。

 

このように解答の字数を増やそうと思えばいくらでも増やせます。

 しかし「変な材料」を本文から抜き出して「適当」に付け加えると、元の答えを台無しにしかねません。

『記述のツボ』を意識して、少しずつアレンジしていくのがコツです。料理の味付けと同じです(笑)

味が足らないからといって調味料ドバドバドバぁ~はNGなのです。

 

では、先ほどのラフを『記述のツボ』で「料理」しましょう!!

(ラフ)=「開発」によって、作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間は「闇」を持たないから。(46字)

まず「間接理由」があるか?→この場合なら『「闇」を持たない』理由→すでに「ラフ」の中に『「開発」によって』とあるので新たに付け足すものがない→『「光り」の領域の増大』はどうか?→ダメではないが、「ラフ」の中の「開発」や「作り出された人間の住む空間、人間の支配する均質空間」の中に「明るい電灯が大都市から地方都市、住宅の居間からその他の部屋へと普及していく」=『電灯が「闇」を克服する』(24行目、29行目)という内容が意味的に含まれているので、「ラフ」とダブってしまうので避けた方が良い。

ならば『記述のツボ』②の傍線部の内容説明はどうか?

(傍線部)「妖怪が棲むことは容易なことではない」=(27行目)「妖怪は追放されてゆくことになった」(31行目)「妖怪の空間は縮小していった」などが見つかる・・・が、これらを使うと(字数は増えるが)、今回の場合=「そのような空間に妖怪が棲むことは容易なことではないのは明らか」な理由としては弱い(もちろん他に材料がない場合、あるいは他に材料を探す時間がない場合はこれを合成するが)。

さらに『記述のツボ』③「直接理由」の内容説明はどうか?

「ラフ」の『「闇」を持たないから』の言い換え、説明は本文にないか?

「ある!!」→(29~30行目)『電灯が「闇」を克服するということは~消滅してゆくことでもあった』の次に「つまり」とあり、その内容を説明していることになる。

『「闇」から紡ぎ出されるうわさ話や物語が人々の周囲から消え失せていったわけである』がそれだ!!

これを先ほどの「ラフ」に合成して全体を整える。

「開発」によって、人間の住む空間、人間の支配する空間に変貌した均質空間には「闇」がなく、そこから妖怪にまつわるうわさ話や物語が紡ぎ出されることはないから。(77字)

完成した!!

㊟模範解答の「コスモロジーが共有されにくい」という指摘は、必ずしも解答に入れる必要はありません。「うわさ話や物語が定着せず」という内容が、入っていればOKです。

2015第1学期『青木邦容の基礎→標準現代文』第1講見田宗介「現代社会の理論」要約&記述解答&復習問題

【要約】

世界銀行等の貧困な層の定義は、一日に1ドル以下しか所得のない人が世界中に12億人もいて、75セント以下の「極貧層」さえ6億3000万人もいるというものだが、こうした貧困のコンセプトは、たとえ善意の意図からそれがなされ、一時的に良い政策につながっても原理的には誤っており、長期的には不幸を増大するような政策を基礎付けてしまうおそれがある。なぜなら貧困は、貨幣をもたないことにあるのではなく、金銭を必要とする生活形式の中で、金銭を持たないことにあるのであり、「南の貧困」は、そもそも貨幣を必要としなかった人々が、自然や共同体から引き離され、貨幣やGNPを必要とするシステムの内に投げ込まれてしまった上で、所得やGNPが低いままであることがその原因である。こうした二重の剥奪である〈貧困〉のコンセプトの正しさは、世界銀行等が用いる貧困層の定義よりも、はるかに多くの所得を有するアメリカに、やはり貧困を強いられている人間がいることでも証明される。貨幣からの疎外の前に貨幣への疎外があるために、特に現代の情報消費社会のシステムは、絶対的な必要を更新し、第一次的な剥奪を巨大化、重層化することで、〈必要〉とされる貨幣の数量を巨大化させ、新しく、切実な貧困の形を形成しているのである。

 

【問2】

貨幣をはじめから必要としていない世界を「所得」の量で「貧困」と定義しているから。 (40字)

 

《復習問題》

問1 本文25行目にある「貨幣への疎外」の内容を述べている部分を、45字以内(句読点含む)で抜き出し、以下の解答欄に合うように示せ。(㊟解答は最下段なのでスクロールして確認のこと)

 

[         45字以内           ]こと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

貨幣を媒介としてしか豊かさを手に入れることのできない生活の形式の中に人びとが投げ込まれる(44字)

2015第1学期『現代文読解』第1講中村良夫「風景学・実践編」要約&漢字解答&記述解答&復習問題&文学史(オマケ)

【要約】

小林一茶と飯田龍太の句を詠み比べてみると、前者が風景の視覚的美しさを詠み、後者が皮膚感覚で触った風景の気配を詠んでいるという違いに気付く。これらを通して、風景には視感覚の勝った風景と触感覚に秀でた風景の二つの側面が存在すると考えられるが、そうした風景を描いた風景画には、現実の風景知覚にあるはずの自己の身体が慎重に排除されている。しかし実際には、私たちが現実に風景を体験する時は、視覚と身体感覚が同時に働いているのであり、世界の生きた気配を内側から捉え、外側から形として客観視しているわけである。こうして現実の風景は、以上のような二つの側面の双対関係をもって我々の前に立ち現れる。

 

【問1】

ア 歓声 イ 排除 ウ 秩序 エ 鼓動 オ 息吹

 

【問4】

一茶が、視感覚で外側から捉えた風景の美を伝えるのに対し、龍太は、内側から触感覚で捉えた世界の生きた風景の気配を伝える。

 

《復習問題》

本文中では一茶の句と龍太の句を対比して、それぞれが伝えている風景の二つの側面が語られているが、龍太の句が伝えていることを具体的に説明した箇所を、13字で文中から抜き出せ。(㊟解答はスクロールして最下段参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》皮膚感覚で触った山河の気配

【問9 文学史 オマケ】

イ 松尾芭蕉 ロ 小林一茶 ハ 向井去来 ニ 与謝蕪村 ホ 松尾芭蕉

【よくデル!!『松尾芭蕉の紀行文と俳文』】

《覚え方》野ざらしの 鹿島はおいの 更科の 奥の庵で 旅を語りぬ (㊟五七五七七のリズムで覚える)

①野ざらしの 『野ざらし紀行』 ②鹿島は 『鹿島紀行(かしまきこう)』 ③おいの 『笈の小文(おいのこぶみ)』 ④更科の 『更科紀行(さらしなきこう)』 ⑤奥の 『奥の細道』 ⑥庵で 『幻住庵記(げんじゅうあんのき)』(俳文) ⑦旅を語りぬ 作品名ではなく「紀行文」であるということ(㊟紀行文とは旅をして、その時の経験や感想、見聞きしたものなどを記した文章。和歌や俳句、短歌あるいは漢詩などが入っていることが多い。旅日記のようなもの。「土佐日記」がその始まりとされる。俳文とは、当時の俳諧のエッセンスを盛り込んだ今で言うエッセイのようなもの。今回の設問の選択肢ロ 「おらが春」は小林一茶の俳文として超有名。) 

2015第1学期第1回『Weeklyテスト演習(応用)』佐伯啓思「市民とは誰か」要約と解説講義補足 

【要約】

西欧は「個人主義社会」だから西欧には「個」が確立しているが、日本はムラ社会、集団主義社会だから「個」が確立していないと言われるが、実際はヨーロッパ社会ほど、一方で個人主義を唱えながら、他方で国家意識や地方意識が強く、地域共同体や家族という集団の凝集力が高いところはそれほどない。そしてこうした「個」と「集団」の強い緊張が、「公」と「私」の鋭い峻別を生み出している。一方日本では、「私」の世界と「公」の世界の区別が極めて曖昧であり、ヨーロッパでは「公」と考えられる世界へ、日本では「私」が当然のようにはみ出している。これは、日本の「公」が「お上」の観念と同一視されており、「公」は国家的、政治的、官僚的なことがらであるという了解ができあがってしまったことによる。さらに、戦後日本では、戦前の国家主義の反動で、「公」よりも「私」を重視する風潮ができあがってしまっているために、「公」は、個人の感情や個人の利害打算にすぎない「私」に席巻されてしまうということも起きている。

 

【解説講義補足】

《問5》

①記述問題なので本文を読解する前に「何をきいているのか」をチェックする。

②『(本来は家の中でしか見られないはずの)「私」の世界の親子関係が、家の外にまで及んでいる(=はみ出している)』ことを説明せよ・・・ということだが、こうした内容に関連すると思われる箇所に注意しつつ本文を読み進む。

③講義で述べたように、第8段落から、ヨーロッパの子供たちが「公」の世界のルールを重んじているという内容と対比する形で、日本における子供の姿が説明されている。また、(講義では省略したが)11段落に傍線部分と同じ表現を見つけることもできる(→「こうなると、ヨーロッパでは『公』と考えられる世界へ、わが国では『私』がはみだしていく」の箇所)。

④③で見つけた箇所、及びその前後から問5に使える材料を抽出し、まずは「簡単な答え」=ラフを作成してみる。

⑤今回は、ラフを作成する際に、どのようなポイントを抽出すれば良いのか。③で発見した箇所に注目すれば、いずれにせよ8~10段落に注目する必要があることがわかるが、さらに正確に、設問でチェックした「『私』の世界の親子関係が、家の外にまで及んでいる」という表現に対応する箇所に注意すると、(講義で説明したように)8段落の「家の中も外も何の区別もなく、甘やかされ」ているという表現が、「『私』の世界の親子関係」=甘やかし、「家の外にまで及んでいる」=「家の中も外も何の区別も」なく・・・という風に対応していることを確認できるので、ここを使って「ラフ」を作成する。

⑥(ラフの作成)日本では、家の内外に関係無く、親が子供を甘やかしてしまっている状況。〈34字〉

⑦(字数調整)⑥で作成したラフは、字数が不足している。傍線部内容説明問題で字数が不足している場合は(講義で述べた青木方式を使い)、ラフを詳しく説明するための「根拠」「理由」を本文から探し、ラフに加えるようにする。今回のラフ「日本では、家の内外に関係無く、親が子供を甘やかしてしまっている状況」が「なぜ」翔生じているのか?本文では⑤でチェックした箇所に『「公」の世界のルールというような感覚は極めて薄い』とか『ヨーロッパにおける、家の外は基本的に「公」という感覚とは異なっている』とか『日本的な「公」観からは、家の外へ一歩出ると「公」の世界であるという理解は出てこない』とうように、その理由が説明されている。

これらのいずれかを「根拠」「理由」として⑥で作成した「ラフ」に加えれば良いであろう。

⑧(完成)日本は、ヨーロッパのような「公」の世界のルールというような感覚が薄いため、家の内外に関係無く、親が子供を甘やかしてしまっている状況。 〈66字〉

  (参考・・・別解)「公」の世界のルールという感覚が薄いために、家の内外の区別なく、「私」の世界と同じように「公」の世界でも親が子供を甘やかしてしまう状況。 〈68字〉

 

上記の解答は、解答にある採点基準と-

 

①(日本では、)「私」の世界(家の中)と「公」の世界(家の外)との区別が曖昧な状態にある、という指摘

≑ 「家の内外に関係無く」

②「私」の世界(プライべートな親子関係)が「公」の世界(家の外)にまで拡張している、という指摘

≑ 「(日本は、ヨーロッパとは異なり)親が子供を(外でも)甘やかしてしまっている」

③「公」の世界のルールに対する関心が薄い、という指摘

≑ 『(日本は、ヨーロッパのような)「公」の世界のルールというような感覚が薄い』

 

-というように概ね対応している。

 

記述が苦手な人は、まずは「簡単な解答」=「ラフ」が書けるようになることを目標としよう!!(その後は【青

木方式】で何とかなります(笑))

 

《問7》

講義で述べたように、(特に苦手な人や解答スピードを上げたい人は)『中間チェック』利用し、本文を前半と後

半というように分割して、それぞれの情報から選択肢を吟味する。

(講義で説明したように)前半の情報で既に④が×なのは確認できた。後の選択肢はどうか?後半部分を読解後

に吟味してみると-

 

1たしかに(「公」の世界に出ると、ヨーロッパでは、親は子供に厳しい態度に出るとあるが(6段落)、その理

由は選択肢のように、子供というものが未熟な存在だと考えているからではなく、本文で何度もくり返されてい

たように(=講義で説明した【オタクの法則】を思い出そう!)、ヨーロッパでは「公」と「私」がするどく峻

別され、(家の外は基本的にすべて「公」という感覚を持ちつつ)「公」の世界のルールを重んじているからであ

る(7段落、9段落)。

2「国家のために個人が抑圧された時代を経験した」は、10段落に「戦前の国家主義」とあり、またその反動で

「公」よりも「私」を尊重する風潮になったことが説明されている。またそれに続いて選択肢の後半は11段落

の説明とそのまま合致する。

3ヨーロッパに紛争が多かったことが、個人主義傾向を生んだとあるが、3段落にあるようにヨーロッパで「激

しい国家間抗争」があった歴史が生み出したのは、逆に「国家意識や地方意識」である。「個人主義的傾向」で

はない。

4先に述べたように前半情報で×(講義で述べたとおり)。

5 7段落にあるように、一人前の「個人」として認めてもらえる条件は「公」の世界のルールに反しないこと

であって、選択肢のように「家庭のルール」を守ることは条件ではない。

 

以上、お疲れさんでした!! 青木の講義情報はこちらをチェック!! → 青木の講義はココで受けられる!!

ついでにテレビにも出てます・・・「今しょ!」の人ほどではありませんが(笑) 一部紹介→ TV

2015第1学期『現代文基本マスター』第1講内田義彦「資本論の世界」要約

【要約】

人間は労働そのものを常に嫌っているわけではないことは、子供を観察すれば理解できる。彼らは目的を定立し、その目的にあった道具を作り、またその目的に合うように、自分の身体なり神経なりを操縦している。そうすることで彼らは自分自身を生産しているのだ。しかしこの一連の過程が、子供自身から離れ、他人の命令によってなされる時、子供は労働を嫌いになる。こうして労働は非効用になり、楽しみの対象ではなく嫌悪の対象となる。