【要約】
貨幣と言葉は、両者共に〈価値〉の基盤と言えるが、言葉の方はそう言われても必ずしもピンとこない。なぜなら言葉は貨幣のような直接的な効用を持たないからであるが、言葉がなければ価値判断といった思考ができない点で、やはり価値をつくり出す基であると言える。また各時代・各地域によって異なる言語共同体の価値観は、それぞれの持つ言語が作り出すものである。こうした貨幣と言葉の類似点を掘り下げていくと、文化の本質と言うべき二つの特徴が現れてくる。それはいずれの価値も〈関係〉から成り立っているということであり、またその〈関係〉は予めある“もの”と“もの”とがいかなる関係を取り結ぶかという形成的関係ではなく、「〈物〉を生み出す関係」、つまり存立的関係であるという点である。貨幣や言葉はともすれば予め存在する〈物〉の記号や代用品と思われがちだが、実際には、貨幣や言葉はそもそも存在していなかった諸価値を創り出す存在である。
【復習問題】
結局、本文で筆者が明らかにしようとした「文化の本質」とはどのようなものか。次の①~⑤中からその説明として適当なものを選べ。
①文化と文化の関わりこそが文化の本質であり、他の文化との関わりを持たない場合は、その文化の価値は結局生み出されないままになる。
②文化の価値に絶対的なものはなく、他の文化との関わりや自国内の文化現象同士の関係などによって、その都度価値は流動的に変化する。
③価値観が文化や時代によって異なることから、文化の価値は国や時代毎に異なり、一見他より絶対的に勝れているような文化も、それほどでもない。
④文化は、混沌とした世の中に対して人間が言葉を持って主体的に関わった結果生み出されたものであり、その価値は自明ものと言える。
⑤人間とって文化とは、言語や貨幣に代表されるように、人間が創り出したある種の基準によって形成されているものであり、その価値は普遍性を持つ。
【解答】
②