【要約】
「ぼく」の最も嫌いなものは、善意と純情である。善意の善人ほど始末に困るものはない。その点で、悪人は、「ぼく」にとっては案外始末のよい、付き合い易い人間である。悪は決して無法ではなく、しかもこちらが悪のグラマーを心得て、彼らを警戒さえしていれば、彼らは仕掛けてこないものである。しかし善人は、ただその動機が善意というだけで、こちらが不当に蒙った迷惑に対する責任を解除されるものとでも考えているらしい。そればかりか、深甚な感謝さえ要求してくるという奇怪さである。そしてこの善意に対しては警戒が利かず、絶えず「ぼく」は恐れていなければならない。その意味で、やはり聡明な悪人こそが、地の塩であり、世の宝であるとさえ「ぼく」には思える。
【復習問題】本文12行目「善意、純情の犯す悪」の説明として最も適当なものを次のa~dの中から一つ選べ。
a 他人に迷惑を掛けても、そしらぬ振りをすること。
b 自分の行動の基点に善意があることを、免罪符としていること。
c 相手にとがめられると、その相手が純情でないとなじること。
d 相手の持つ純情を、自分のものと錯覚すること。
【解答】
b