2014第2学期『現代文読解』第5講加藤周一「羊の歌」要約&漢字解答&記述解答&復習問題

【要約】

子供の頃の私は、父に連れられて父の生家を訪ねることを楽しみにしていた。私たちは田舎に行くたびに二晩か三晩泊まったが、子供の私にとって、そうした小さな旅行の楽しみの性質は、後年、時に太平洋を越え、時にインド洋を越えた旅の楽しみとあまり違わない気がする。それは、離陸したばかりの旅客機の中で味わう感覚と、小さい私が汽車で荒川鉄橋を渡る感覚が少しも違わないからである。それらの旅は、私にとっていつもの生活の時間表からの決定的な解放であり、しかも、もうひとつの日常性との接触は、まだはじまっていないという点で、あらゆる社会から切り離された一刻の私自身を味わうことができるという共通点を有していた。しかし、父の生家へ向かう村の道を歩く感覚は、空港での感覚とは全く異なっていた。むき出しの好奇心でもって「東京の人」である私たちが通り過ぎるのを村の子供たちは、ただ見守っていたが、そうした視線によって、子供の頃の私は、自分が「東京の人」であることを発見し、自分がその村に決定的に属していないことを知った。その頃の私は、自分が彼らの一人であったらと願ったが、一方で村の子供たちが「東京の人」になりたいという願いを持っていることを想像できなかった。村の子供たちに、自らが潔しとしない憧れを持っていた頃の私は、彼らを観察し、その内側を想像し、彼らの側の事情を理解することは出来なかったわけである。私の両親は、自分の子供を誇りとしてから、自分たちの子供の心に起こっている、このような事情を決して想像することはできなかった。

 

 

【問1】

ア にわ イ 精通 ウ 到底 エ 憧れ オ 讃嘆(賛嘆)

 

 

【問3】

すべての日常性からの解放の感覚。

(別解)日常性からの解放の感覚を味わうこと。 

     すべての日常から解放された自分を味わう。

 

 

【問4】荒川は、太平洋よりは狭いが、小さい私の汽車の中の感覚は、太平洋を越える時の旅客機の中で味わう感覚と少しも違わない。

【復習問題】

テキスト本文30行目「ひとつの村は、そこに誰かが決定的に属していて、誰かが決定的に属していないところなのだ」とあるが、筆者=「私」が、「決定的に属していない」と感じた理由にあたる一文を、本文から25字以内で抜き出せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】子供たちはすべてを知り、私は何も知らなかった。