2014第2学期『センター現代文』第5講木村 敏「境界としての自己」漢字解答&要約&復習問題

【要約】

人間だけでなく全ての生きものは、その環境との境界面で、環境との最適な接触を維持することによって生命を保持しているが、その際の環境には、ある個体と関係を持つ他の個体や、個体内諸条件も含まれ、個体と環境との接点あるいは境界というのがなにを指しているのかを一義的に確定するのは難しい。そもそも個体自身の諸条件が、環境とも見なされるなら、「個体」とはそもそも何なのかが分かりづらい。一方、複数の個体が環境との境界面においてその集団全体の存続のために、環境との最適の接触を求めているのは、個体の生命維持の行動と変わらない。その点で、それらを一個の「個体」と見なすこともできるが、その場合でもやはり境界の「こちら側」と「向こう側」を確定するのは難しい。その個体に準じるような集団内部では、各個体が内部環境でありながら、個々の欲求によって活動し、しかも個体としての集団のまとまりは失われないからだ。自己意識を身につけた人間は、環境との折衝の中で新たな戦略を手に入れたが、その自己意識ゆえに集団行動と真っ向から対立する。これでは生存に有利なはずの自己意識が、逆に人間の生存を脅かすということにもなる。その「私」の自己意識とは、単なる個体識別能力ではない。それは、自己の存在が唯一無二の存在であるという特権的な意味を与え、他のもろもろの個体間の差異とは絶対的に異質の特異な差異でもって他者と区別する。こうした自己意識は、生き物それ自身とそれ自身でないものとの境界そのものとして、この境界を生き、意識するところに生まれる。その意味では境界は、生命の営みが行われる、形をもたない生命の住処とも言える。

        (参考イラスト1)            (参考イラスト2)

境界としての自己イメージ1 境界としての自己イメージ2

 

 

 

【問1】

(ア)駆逐 ①蓄積 ②牧畜 ③逐次 ④竹馬 ⑤構築

(イ)摂取 ①拙劣 ②摂理 ③雪辱 ④応接 ⑤屈折

(ウ)習慣 ①歓喜 ②監視 ③看護 ④循環 ⑤慣例

(エ)折衝 ①承諾 ②詳細 ③衝突 ④交渉 ⑤省力

(オ)尽く ①迅速 ②敵陣 ③甚大 ④尋常 ⑤尽力

 

 

【復習問題】

テキスト本文78行目「『私』自身ですら、これを意識したとたんに中心から外へ押し出される」とあるが、それはなぜか。その理由として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ(㊟解答は最下段)。

 

①「私」が円の中心であり、私以外の全ての他者は中心の外にいるという意識は、私という中心から外れないと意識できないから。

②「私」の内部には、中心という内部があり、それが何らかの理由によって、中心の外にいる私以外の他者に脅かされるから。

③「私」は「内」でありながら「内」と「外」の境界自身でもあるという非合理な位置を占めている故に、そこにとどまれないから。

④「私」自身が、「私」を意識すると、自己を客観視することになり、私以外のすべての他者との絶対的区別がなくなることになるから。

⑤他者は外部世界に、自己は内部世界に置かれているが、特異点としての「私」という自己は、自意識の強さから外部世界に押し出されるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】