【要約】
実存主義者達は、過去と未来の明晰な峻別の上に立ち、〈現在〉という曖昧な時間を認めないことで、人間の選択の純粋性と自由は保証されていると考えた。しかし実際の私たちは、任意に切り分けができないひとつながりの濃密な現在に生きており、こうした充実した現在に生きている限り、主体的に行動を選択しようとすればするほど、私たちは、かえって自己抛棄に身を任せなければならない。もちろん自由な意志として環境と対峙することはできる。しかし、その自由意志と環境が向かい合う場所=時代は、選択することが出来ないという現実に直面する。
【問1】
(ア)任意 ①人情 ②避妊 ③解任 ④忍耐 ⑤認可
(イ)濃密 ①濃霧 ②納品 ③首脳 ④有能 ⑤農業
(ウ)絶対 ①体操 ②優待 ③連帯 ④怠慢 ⑤対立
(エ)疾走 ①湿地 ②疾風 ③失速 ④執筆 ⑤漆黒
(オ)逆説 ①雪辱 ②仮設 ③骨折 ④仮説 ⑤関節
【復習問題】
問題1 次の文章=要約の空欄に当てはまる表現をテキスト本文中から抜き出して書け。
問題2 空欄Xにあてはまる言葉を講義を思い出して書け。5字。
実存主義者たちは、選択の場所と選択の自由意志、つまり( 1 )と( 2 )とを切り分け、現在を二重の空白の時間とも言うべき、( 3 )と考えて、( 2 )を選び取ることができる人間の自由を保証した。しかし、( X )、つまり人間の肉体と精神を鮮やかに切り分けられるという考えが滑稽で非現実的であるように、自分の( 1 )と( 2 )を切り分ける考え方は、やはり楽天主義としか言いようがない。実際の私たちは、任意にそれらを切り分けることが不可能な、ひとつながりの濃密な現在に生きるしかなく、こうした現在に生きている限り、( 2 )に向けて行動を選択はできても、その行動を完結させるという結果は選ぶことができず、主体的に行動を選べば選ぶほど、かえって結果に対して、私たちは( 4 )の姿勢で臨まねばならない。もちろんそれは人間が環境や外的条件に逆らえない存在であるという意味ではなく、人間は自由意志を持って環境に対峙はできるが、そもそも自分が存在するその環境、あるいはその環境と巡り会う機会を前もって選ぶことは不可能なのである。
問題3 本文11~12行目《 》(《投げだされて、しかも企てるもの》《現在》)の表現効果を説明するものとして最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
①二つの《 》は、同じ表現があっても他の表現との差別化はかるという効果を持ち、意味的には人間や人間のあり方のメタファーになっている。
②二つの《 》は、強調の意味を持ち、他の同じような表現と比べて筆者が特に読者の注目を促す効果がある。
③二つの《 》は、同じ表現が他にも見られるものがあるが、《 》は、哲学的、形而上学的意味でその言葉を説明する際に使用している。
④二つの《 》は、同じような表現が他にも見られるが、《 》の付いたものは筆者の主張の前提を特に表す効果を持つ。
《解答》
問題1
1過去
2未来
3純粋な空白
4自己抛棄
問題2
心身二元論
問題3 ③