【要約】
アル・カーイダの首魁ウサーマ・ビン・ラーディンが、アメリカ同時多発テロから十年を迎えたタイミングで殺害されたが、この時、同時に「アラブの春」が進行した事実は、アラブ・ナショナリズムやイスラーム原理主義といった外向けの思想で内政の矛盾を糊塗する独裁者に市民が追随した現代アラブの歴史に終止符が打たれたことを象徴する出来事であった。九・一一からの十年は、内戦やテロによってイスラーム共同体の“理想”を政教一致国家として実現しようとするアル・カーイダなどイスラーム原理主義過激派のおぞましさを白日のもとにさらした。そうした中で、アメリカを憎むあまりアル・カーイダのテロに共感しがちだったムスリムとアラブの市民たちも、自らの独裁者を追放しない限り、市民権や豊かさを決して手に入れることは出来ないことに気付いた。こうした「アラブの春」は、“挙国一致”の名目で市民の民主的願望を封殺してきたアラブ・ナショナリズムの限界を露呈するものであった。しかしテロリズムが衰退する道筋を楽観的に描くことが出来ない面もある。テロリズムが民主化運動の一翼に入り込む危険な兆候や、市民革命の中に国際テロ組織が浸透しているという情報もあるからだ。これを解決するには、独裁者が国内の抑圧を正当化してきた根拠を無くすことである。具体的にはパレスチナ問題の解決や若年層の人口増加による不完全雇用(失業)の解消が必要である。あくまでウサーマ・ビン・ラーディンの死は、国際テロリズムの支持基盤を根絶する一里塚にすぎない。
【復習問題】
本文34~35行目「異教徒の~むずかしい」とあるが、なぜ「むずかしい」と言えるのか。本文の表現を使って90字以内で説明せよ。
【解答】
グローバル・テロリズムが、アラブやムスリムの一般市民から犠牲者を出したことと、アメリカの引き起こした戦争で一般市民が犠牲者になったことは、人が死んだという点では同じだから。