【要約】
池澤夏樹の「マシアス・ギリの失脚」と小林信彦の「怪物がめざめる夜」は、私たちの社会とメディア、とりわけマスメディアやマスコミュニケーションとの関係を考える上で役立つ、好一対の材料を提供してくれる小説である。「メディア社会」の中で、私たちは、情報やメディア、またそれらと共にある社会を常に批判的に見なければならない。しかしメディアと共に広がった社会の中で、いつの間にか大衆化した私たちは、「情報」や「メディア」に対して無防備であり、情報をそのまま事実として受け入れてしまったりする点で、私たちの社会のマスメディアは、潜在的に「怪物」である。したがって私たちは、メディアを読む能力を身につけて、それに対する批判的スタンスをいつでも取りうるようにしておくべきである。メディアに対する批判的機能、それを環視する場所、マスメディアという眠れる怪物に対する批判的公共の場として、「マシアス・ギリの失脚」に登場するような「広場」を、私たちは私たち自身の中に持ち続けることが必要である。
【問3】(解答例)
Bの描くようなマスメディア社会を生き抜くには、Aのベンチの機能が必要なことを我々に教えてくれる点。
(別解)
Bの小説は、マスメディアと共にある社会の危険性を描き、Aがそれを避ける方策を示唆している点。
【問6】(解答例)
大衆という不特定多数のネガティブな存在であること。
(別解)
メディアを読む力の無い大衆という不特定多数の存在。
情報をそのまま信じる大衆という不特定多数の存在。
【復習問題1】問6、傍線部F内の「公衆」とは、本文によればどのような人々のことを指すのか?35字以内で書け。(㊟解答例は最下段)
【復習問題2】テキスト本文57~58行目「そのようなメディア~あるということ」とあるが、これを一語で表すとどうなるか。次の文に当てはまる言葉を本文中から抜き出せ。(㊟解答は最下段)
〇あるメディアが、また別のメディアを批判する内容をそのまま事実として受け入れ、批判されたメディアに悪い印象しか持たなくなるように( )されてしまうこと。
【復習問題1-解答例】
情報や意見の交換、語り合いによって市民社会の意思形成に参加する人々。
【復習問題2】扇動