2014夏期講習会「センター現代文」第5講吉岡洋「スタイルと情報」要約&漢字解答

【要約】

「スタイラス」による電子入力が、「書く」行為であるかどうかは、デジタル/アナログの「違い」に関わっている。スタイラスを用いて「書く」行為には、紙に書く行為にあるはずの摩擦や抵抗が感じられない。またスタイラスは、それが触れている物理的対象をなんら変化させない。本来の書く行為にはあるはずの、書き手の運動が物質的世界から受ける、抵抗としてのフィードバックがないのである。本来、書く行為とは、紙の上に物質的な痕跡を残すことだが、その痕跡の「初期化」が出来ないのも、本来の書くことの特徴である。「スタイラス」は、元来、蠟板を掻き削って文字を書くための鉄筆のことを意味していたが、またそれは〈文体〉を意味する「スタイル」という語の語源でもあった。その点でスタイルは、個人の身体が物質世界を引っ掻いた痕跡の中に記録される何かということになる。これは書き手の精神と身体とが、物質世界の中に転写され、固定されることであり、またそれゆえに筆跡は変更不能性を帯びる。そして「書く」ことを通じて身体性が焼き付けられた「作品」は、あたかも自立的な意味を持つ存在のような、記号と解釈のプロセスが完結しているようなものに見える。しかし電子的言語には、そもそも完結性が存在しない。その点で「スタイラス」をはじめとする電子的言語環境は、「スタイル」を支えている世界観を根本から堀り崩している。その意味で、本来の「書かれた」作品には無い終結しない記号過程、意味作用に常に介入する解釈者の存在、といった側面が強調される。それは換言すれば言語の非完結的な本質と可能性が解放されることである。こうして「スタイラス」によって、「書く」行為に伴う直接的な身体感覚が消滅することで、「手」はもはや、書く人の精神を体現する特権的な器官ではなくなる。

 

【問1】

㋐付属 ①続編 ②習俗 ③盗賊 ④属性 ⑤一族

㋑圧迫 ①舶来 ②漂泊 ③拍手 ④告白 ⑤迫力

㋒換え ①喚起 ②変換 ③参観 ④一貫 ⑤乾燥

㋓憎悪 ①愛憎 ②贈呈 ③粗製濫造 ④増長 ⑤悪口雑言

㋔循環 ①巡業 ②湿潤 ③順延 ④純愛 ⑤因循

 

2014年夏期講習会「青木邦容の《ハイレベル》現代文」第2講復習問題【訂正】

【復習問題】

本文34~35行目「異教徒の~むずかしい」とあるが、なぜ「むずかしい」と言えるのか。本文の表現を使って90字以内で説明せよ。(←最初は80字になっていました・・・すみません)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】

グローバル・テロリズムが、アラブやムスリムの一般市民から犠牲者を出したことと、アメリカの引き起こした戦争で一般市民が犠牲者になったことは、人が死んだという点では同じだから。

2014夏期講習会「センター現代文」第2講富永茂樹「都市の憂鬱」要約&漢字解答

【要約】

チェーザレ・パヴェーゼの日記からは、ひたすら自分の日記に読みふけっている作者の孤独な姿が浮かんでくるが、それは彼の日記が、ただ毎日つけられたものではなく、彼がそれを繰り返し読み、意見や抽象的思念を追加していたものだからである。こうした再読と記述の追加とは、日記を書くという行為の何か本質的な部分につながっている。なぜなら日記を《自己》を保存する容器と考えるなら、当然そこには保存したものを将来いつか取り出してくるという前提があるはずだからである。それはまさにパヴェーゼが日記に対して行った再読そのものである。しかし、記述の追加という点で、日記における自己の保存は、ジャムの保存とは異なる。というのは、ジャムは消費し尽くされればそこで保存の目的は達成されるが、日記の場合は、記述の追加という形で自己は増殖する。その点で日記は、蓄財や切手・昆虫などの収集に似ている。ただし日記において保存される《自己》は、収集や蓄財の対象とは異なり、他の財と交換されうる余地はないという点で手段の自己目的化が激しく進行する。こうした自己目的化、あるいは自己疎外は、実は近代社会に内在する性格の縮図にもなっている。というのも、自己の記録に拘泥する日記の向こう側に、美術館や博物館、あるいは古文書館などに見られるように、単純な消費の対象とはならない知識や財を記録し、保存し、永遠化することに多大なエネルギーを投じる、近代以降の社会に生きるわれわれに宿命的なフェティシズムが透けて見えてくるからだ。ところで日記は保存という行為の本質を何にもまして純粋に守り、いかなる現実の目的にも拘束されない点で、逆にある種の自由や解放を作者にもたらすとも言える。自己にまつわる記憶を喚起し、それに想像力に結び付けて、存在の感覚を確認することこそが、パヴェーゼのような日記作家の、何ものにも換えがたい楽しみであったに違いない。

 

 

【問1】

㋐根幹 ①関  ②幹  ③肝  ④勧  ⑤管

㋑購入 ①綱紀 ②巧拙 ③紅葉 ④購読 ⑤海溝

㋒堕  ①惰眠 ②無駄 ③蛇行 ④堕落 ⑤妥結

㋓倒錯 ①交錯 ②画策 ③添削 ④索引 ⑤圧搾

㋔依然 ①威力 ②安易 ③維持 ④依拠 ⑤経緯

2014夏期講習会「センター現代文」第1講狩野敏次「住居空間の心身論」要約&漢字解答

【要約】

明るい空間の中では、私たちは視覚を優先させることで空間との間の距離を感じるが、闇の中では、視覚にかわって、明るい空間では抑制されていた身体感覚が活発化し、私たちの身体は空間と溶け合うようにある共通の雰囲気に参与し、闇の持つ「深さ」の次元を身体全体で体験する。近代建築は、明るい空間の実現を目指し、この深さの次元を失った。その結果、互いに異なる意味や価値を帯びた「場所性」が空間から排除され、空間のあらゆる場所は人工的に均質化されることになった。こうした空間は全てが距離に還元されてしまうために、深さがなく、空間のひろがりだけがそこにある。西洋では、深さはこうした純粋に空間的な意味しかもっていないが、日本では、それに時間的な長さが加わり、それを「奥」ということばであらわす。奥は漠然とあるなにものかを暗示することばであり、空間的にも時間的にも到達しがたい最終的な場所、時間を指し、さらに深遠ではかりがたいという心理的意味を有する。その意味で目的へ向かうプロセスの演出によって私たちの心の中に生じる心理的な距離感覚であり、時間感覚である点で、人間の身体感覚に深く関わる概念である。

 

 

【問1】

㋐装置 ①捜索隊 ②騒動 ③壮健 ④服装 ⑤地層

㋑拍車 ①迫力  ②薄情 ③拍手 ④博識 ⑤白状

㋒排除 ①排出  ②排斥 ③腐敗 ④背信 ⑤祝杯

㋓踏み ①舞踏会 ②検討 ③殺到 ④凍結 ⑤盗難

㋔要素 ①祖先  ②租税 ③素朴 ④疎遠 ⑤訴訟 

 

【講義補足】上智大学 経済、総合人間科などに出題される近代文語文対策について

【参考】夏期(冬期)テキスト47ページ

【対策】

①テキストのような文語文を横に置き、その口語訳を見ながら辿り読みしていく。

②自分の頭で考えた解釈で合っているかどうかを口語訳で確認しながら読み進み、意味が分からない表現に関してはチェック入れる。

③特にチェックを入れた箇所について、それが近代文語文頻出の言い回しである場合、古語辞典や国語辞典で、その形と意味を覚える。

④できるだけ沢山の文章を読み込むこと。

⑤ある程度読み慣れて、するすると文章の大意をとれるようになったら、過去問をやってみよう!!

【参考図書】

〇近代文語文問題演習 (駿台受験シリーズ)  川戸 昌 (編纂), 二宮 加美 (編纂)

〇講義では明治大学法学部の赤本も「使える」と言いましたが、どうやら最近の赤本は、昔の問題をあまり載せていないために(法学部では「文語文」の読解を重視していた)、見つからない可能性があります。したがって代わりに一橋大学の赤本を利用して下さい。

〇京都大学の赤本は、昔の問題も豊富に掲載しているので、2002までの過去問の大問2を利用すると良いですよ。

〇早稲田大学文化構想学部2012年 大問3もやってみよう!

2014年夏期講習会「青木邦容の現代文」第1講復習問題【訂正】す、すんまへん(^◇^;)

【復習問題】

本文7行目「パラダイム・チェンジ」の説明に当たるものを次の選択肢の①~⑤の中から選べ。(㊟解答は最下段)

 ①    物質が燃焼するのはフロギストンと呼ばれる燃素という物質の放出の過程であると考えられていたが、金属を燃やすと質料が増すため、燃素は負の質料をもつものと考えられた。

②    虹は、古代中国では天界に棲む龍の類だと考えられていたが、科学の発達により、太陽の光が、空気中の水滴によって屈折、反射されるときに水滴がプリズムの役割をし、複数色の帯に見えることが分かった。

③    惑星の位置予測がずれるなど天動説では説明できない事柄が出てきたので、太陽を宇宙の中心におき、そのまわりを地球をはじめとした惑星が回転していると考える地動説が登場した。 

④    18世紀、摩擦された物体が帯電することは知られていたが、電気が物体を通じて伝わることは知られていなかったが、一連の実験により、電気が伝播することを突き止めた。

⑤    重力による落下速度はその物体の質量の大きさに依らないということを証明するために、ピサの斜塔から大小二つの鉛の玉を同時に落とし、両方の玉が同時に地面に落下することを確認した。

 

 

【解答】が④になっていましたが、正解は③です。お詫び申し上げます。①⇒燃素が燃焼の原因である考え方を変えずに修正しただけなので✖ ②⇒虹の正体が科学的に証明されただけ。また虹が「天界に棲む龍の類だと考えられていた」のは中国だけなので、限定的過ぎる。✖ ③根本的に私たちを取り巻く世界に対する考え方が変わったので〇 ④「一連の実験により、電気が伝播することを突き止めた」は、電気の性質が一つ明らかになっただけなので、ものの見方が「根本的に」変化したとは言えない。✖ ⑤実験によって「重力による落下速度はその物体の質量の大きさに依らないという」仮説が、実証されただけなので✖。

2014年夏期講習会「上智大現代文」第5講要約&復習問題

【要約】

私たち人間は、自分の言葉、母語を子どもの頃からいつの間にか知っているので、ことばについて疑問に思うことはない。これは母語が、我々に選択の余地がなく、もの心がつかぬうちに、無理やり社会の暴力によって覚えさせられたものであるからだ。その意味では言語は、個人がただただ受け入れるしかない社会のシステムであり、社会的現実として誕生の瞬間から人間を縛り付ける。したがって言語によって指されるモノとそれを指し示すオトとの関係は、誰にとっても必然的で自明のことであり、また絶対的に正しいように思われる。しかし、良く考えれば、これらの関係には必然性はなく、言語ごとに随意に決まっている。これを「記号の恣意性」とソシュールは呼んだが、説明されると分かりやすいこの性質は、言語というものの全体にどのようなかかわりを持っているかについてはもう少し深く考えてみる必要がある。現代人は未だに、モノとことばはイコールであるとする言霊的な感覚を持っており、人の名前がその人の本質を表しているように思うが、人の名も結局は親が恣意的に付けた記号に過ぎないのだ。

 

 

【復習問題】本文20行目「社会的事実」という言葉の例として適切なものを次の中から一つ選べ。

a 未開社会において、熊に魂があるという信仰があるために、それを別の社会の人間が宗教の一種であるとみなす。

b ある学生が、資格を取れば取るほど就職に有利になると考え、学業よりも資格試験の準備に時間を費やすようになる。

c モノとモノが社会の中で交換される際に、貨幣が媒体として大きな役割を果たすために、貨幣を大切なものとみなす。

d ピロリ菌がガンの発生原因だと聞き、自分の胃にもそれが存在すると思い込み、除菌することでその発症を防ごうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】C(社会的事実とは、ある社会の中での「人間の作った」決まり事がまるで自然法則みたいに、人間に捉えられ、その人間を縛ることです。貨幣は単なる交換手段に過ぎないのに、貨幣経済の中にいる我々は、貨幣自体に価値があると思い込み、それを大切な物とみなします。貨幣を中心とした我々の経済システムが、我々の思考、価値観を縛っているわけです。)

2014年夏期講習会「上智大現代文」第4講要約&復習問題

【要約】

芸術作品の特徴は何か、という問題に対して、かなり広い支持を集めた説明は、芸術作品に接するときの態度が実用的目的や利害を離れた、美的態度と呼ばれる無関心的態度かどうかというものだが、この説明は不十分に思われる。というのも「無関心的」「態度」の意味が明確ではないからである。その点でむしろ、人間の様々な行動の中で芸術がどのような役割を果たしているかを、一つずつ記述する以外に芸術作品の特徴を明らかにする方法はないと考えられる。つまり人間がそれを芸術とみなし、上手・下手の基準を識別のし易さにおかなかったり、あるいは同機能のものによって代用できないと考える限り、それは実用性を持つものと区別され得るのである。

 

 

【復習問題】本文13行目「一種のゲームの中で芸術をとらえ」るとはどういうことか。次の中から最も適切なものを一つ選べ。(㊟解答は最下段)

  1. 様々な人間の行動や場面の中で、そのつど何かを芸術とみなすような捉え方をすること。
  2. 芸樹の特徴をとらえるために、人間の行動の中で芸術の役割とは何かを問題として考えること。
  3. 芸術と新聞記事のような事実の記述との違いを明確にするために、様々な視点で芸術を捉え直すこと。
  4. 芸術作品の特徴を明らかにするために、芸術作品一つ一つが持つ個性を記述していくということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】1

 

2014年夏期講習会「上智大現代文」第3講要約&復習問題

【要約】

私たちは母語を話すときに文法規則を意識しないが、バイリンガルは運用する二つの言語について、同じ状態の人のことである。バイリンガルはその結果、「言語の文法規則を体系的に学ぶ」機会を持てずに、どちらの言語に対しても「母語の自然で規範的なかたちである」という自信が持てない。母語運用能力というのが、「次にどういう語が続くか(自分でも)わからないのだけれども、そのセンテンスが最終的にはある秩序のうちに収斂することについてなぜか確信させられている」という心的過程を伴った言語活動のことだとすれば、この状態は想像以上に重い。同じく、外国語を学ぶ際に私たちは、「ストックフレーズ丸暗記」から入り、それを適切なタイミングで再生し、相手が自分の言いたいことをできるだけ早い段階で察知できるコミュニケーションを目指すが、それは言語を通じて自分の思考や感情を造形していくという言語の生成プロセスに身を投じるという、母語のコミュニケーションが理想とするものとは違う。

 

 

 【復習問題】本文25行目「思考を適切に表現できるヴィークルとして性能がよい」とはどういうことか。次の中から最も適切なものを一つ選べ。

a 言語を通じて自分の思考や感情を、適切に表現できるということ。

b 自分の言いたいことを、効率良く相手に伝えられるということ。

c ある言葉を発すると、矢継ぎ早に次の言葉が思考を乗せて発せられること。

d 自分の思考が、言葉という仮の形を取って相手に伝わっていくこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】b