日本の建築空間の特徴は、厚い壁で空間を閉鎖的に区切り、その機能分担を明らかにした西洋のそれとは異なり、壁のない大きな屋根による開放された空間であり、その意図が自ずから不明確な点にある。その点で西洋の建築は、空間の用途が決まっているために、それに合わせて窓を作るなどの空間の意図的表現が可能となる能動的、かつ論理的な空間である。しかし、日本の建築は、その開放性から外の自然と変わりない空間であり、壁によって自然と対立しようとする西洋のそれとは異なり、自然と同化しようとする受け身の空間である。そこには空間の独立性はなく、またその内部に微妙な変化を見せる明暗を持つ。そのような空間は存在が不確かという点で、その理解の仕方も個人的なものとなる。