2015第1学期『現代文読解』第7講外山滋比古「未知を読む」要約&記述解答例&復習問題

【要約】

ここ三十年間、表現において、わかりやすいことはよいことであったが、映像文化の発達も相まって、目に見てからでないとわかったような気がしない、イマジネーションを失った視覚タイプの人間が多くなった。既往の経験、パターンを連想してから理解する、このようなアルファ読みでは、読者は未知の世界のことは理解できないが、人間は大なり小なり未知を読む力を持っている。しかしこのベーター読みは、衰微し、抽象思考のおもしろさ、純粋の美しさが見失われるようになった。全てが擬人的思考から無縁になることができなくなったことは、思想の基盤を失いつつあることと同じであるが、かといってアルファ読みからベーター読みへの転換は現代では困難である。この転換に適した文学作品は、アルファ読みで終始するのが良いという実感尊重主義に陥り、ベーター理解への移行に必要な幼児期のおとぎ話は、近年の映像文化の中でその影が薄らいでいるからだ。また、母国語に比べて感覚的理解の乏しいと思われる古典語や外国語がベーター読みを育てるのに有効な方法だが、こうしたものも既に現代においては、国民的教養の座を降り、あるいは実用語学に変貌して、読解の伝統は今にも消滅しようとしている。その結果、今日の大衆文化において、思想は卑俗化し、抽象的な表現にアレルギー症状を呈する、未知を読む力を欠いた読者が増えたのは当然の帰結と言える。

 

【問4】

記号のように言語を操作する抽象思考によって、自己の経験世界から離れた抽象的な文章や未知の世界のことを理解するような仕方。(60)

 

《復習問題》

テキスト本文18行目「人間関係の枠組み」とあるが、これを説明した内容を含む一文を60字以内で探し、その最初の5文字を書け(㊟解答は最下段。スクロールして確認すること)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》アルファ読 (テキスト33行目、第6段落最初)

2015第1学期『現代文基本マスター』第5講村上陽一郎「歴史としての科学」要約&記述解答&復習問題

【要約】

今日の近代社会の中で、技術革新の具体的な場面で起こっている事態とは異なり、現代が直面する「進歩」論は、そうした個々の場面を包摂する全体的な文脈の中で問題化している。そうした全体的な文脈は、技術が個別的な場面から、科学へと結びついた一つの社会制度へと変革し、いかに自然の支配と制御を行うかという壮大なプログラムとそれに並行して人類の歴史は自分たちの手で築き上げるものだという人間中心主義的な態度によって、形作られた。そして、人類は救済史観の中での「救済」という概念を「世俗化」し、その実現のために科学技術の革新と、旧時代の政治的=社会的=宗教的桎梏の革新を、標榜して前進しなければならなくなった。しかしこうした「進歩」の理念は、近代西欧の「救済」の定義が自明性を失ったことで疑問符が付くようになった。科学技術によって人類が夢見てきた望みが現実化される一方で、人々はそれによって失ったものに再び「救済」を仮託し、また現実化の遅れている地域は、依然としてかつての「救済」を進歩に託している。

 

 

【問1】①包摂 ②営為 ③権威 ④発露

 

【問5】

自然の支配と制御及び人間中心的な態度を成立要件としたヨーロッパの指導的理念としての「進歩」に疑問が生じたということ。

 

《復習問題》テキスト本文10行目「進歩」論について、問題化している「進歩」論とはどのようなものか。次の中から適当なものを選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認すること)。

①人間自らの手によるその悲惨と病苦からの救済のためのプログラムと、自然を支配し制御する科学技術によってキリスト教の救済史観の克服をめ目指すもの。

②社会制度の変革をもたらした技術革新と、個別的具体的な技術の改良によって旧時代の政治的社会的宗教的桎梏の変革を目指すもの。

③自然支配の手段である科学技術の革新と、キリスト教に特徴的な歴史観とで「世俗化」された救済を実現していくための巨大なプログラムを作り出すことを目指すもの。

④近代科学の知識をもって自然を支配し制御する全体的技術のプログラムと、伝統的な救済史観の世俗化による人間中心的な態度とで、理想としての近代社会の創出を目指すもの。

⑤自然を支配する主役として人間存在を捉えようとする科学至上主義的な歴史観と、人間を救済するための独自のプログラムを実現していこうとする人間中心的な態度とで、現代科学の諸問題の解決を目指すもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》④

2015第1学期『現代文読解』第6講佐々木健一「タイトルの魔力」要約&漢字解答&記述解答例&復習問題

【要約】

作品に残された名は、優れた質の印であり、その作品の作者の自負の証でもある。そこには作品の価値と名のいずれが先であるか、にわかに断定できない相関関係がある。たしかに「名」は好ましい意味と逆の意味の両義性を持つが、ある「実」が具体的なそれ自身の名を持てば、それは価値や権威を持つ「有名」なものとなる。その点で高度資本主義社会においては商品のネーミングが二つの重要な役割を持つ。それは名前の無い商品は無価値であると見なされることから、商品が名前を必要とする点とその名前の字義によって消費者の求めるイメージを付与する点である。ここには名前の本性が見られるが、またこれらは同時に名前が商品化する理由でもある。

【問1】

          ア自負 (イ不当 ロ富裕 ハ恐怖 ニ負担 ホ普及)

   イ依存 (イ依頼 ロ移動 ハ異論 ニ衣装 ホ安易)

     ウ近似 (イ表示 ロ辞表 ハ時季 ニ主治医 ホ相似)

     エ喚起 (イ転換 ロ喚問 ハ還元 ニ一貫性 ホ歓迎)

 

【問12 解答例】

個々の香水の価値を世の中に知らせ保証する効果を持つと共に、個々の名前の字義を介して消費者が求めるようなイメージを与える。

【別解】具体的な名前を付け対象を聖化し、価値があるかのように見せ、個々の名前の字義を介して消費者が求めるようなイメージを与える。 ㊟「聖化」という表現をそのまま使った人が多いと思うので、上記のような解答も用意してみたが、「聖化」は比喩表現なので本来は使用を避けるべき。

 

《復習問題1》

テキスト本文71~72行目「名前には、人であれ作品であれ商品であれ、名づけられた対象を聖化する力がある」とあるが、その説明として最も適当なものを次のイ~ホから一つ選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認すること)。

イ 名には、名づけられた対象の性質を説明し表現する効果がある、ということ。

ロ 名には、名づけられたた対象を神聖なものとして敬わせる効果がある、ということ。

ハ 名には、名づけられた対象を価値あるものとして保証する効果がある、ということ。

ニ 名には、名づけられた対象とは独立して、それ自体を商品化する効果がある、ということ。

ホ 名には、名づけられた対象に世の中が求めるイメージを付与する効果がある、ということ。

 

《復習問題2》

テキスト本文78~79行目傍線部(8)にある三つの香水の名前が消費者に与えるイメージとして、筆者はどのようなものを想定しているか。いずれにおいても適当では無いものを次のイ~ホから一つ選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認すること)。

イ 即物的なイメージ ロ 官能的なイメージ ハ 芸術的なイメージ ニ 貴族的なイメージ 

ホ 神秘的なイメージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答1》 ハ

《解答2》 イ