2015第2学期『現代文基本マスター』第1講加藤尚武「脳死・クローン・遺伝子治療」要約&復習問題

【要約】

人間が「神を演ずる」ということについて、それは許されるべきことではないという批判がなされる。しかしその批判の背後には、人工よりも自然が良いという一種の倫理学的自然主義の立場が横たわっている。たしかに自然の中には人知を絶する巧妙な知恵が働いている場合も認めることができるが、そうした自然の中の理想的な秩序が人間にとって理想的か、また自然的な自己回復システムが自然そのものにとって理想的であるかといえば、おそらくそうではない。そうした自然は自然的な自然であり、歴史的自然と言えるものである。こうした自然の中に横たわっている技術的操作の限界を破らない内は、技術は自然の法則に服従し、人間性を保つことができるが、人間はそうした素朴自然主義の技術倫理と言うべき状態を既に超えてしまっている。したがって人間にとって自然らしさを残すという課題は、もはや自然に委ねたのでは解決できない。ここで「自然」は究極の価値として無条件に守るべきものである。またそれは人間の歴史的同一性を守ることでもあり、「人間らしさ」を守り、人間の中の自然を守ることでもある。

 

《復習問題》テキスト本文72行目「生命はいつも暗い神秘をたたえたブラックボックスであり」とあるが、これはどういうことか。次の中①~⑤からその説明として最も適当なものを一つ選べ(㊟解答は最下段。スクロールして確認のこと)。

 

①技術が自然の法則に服従しているために、人間は生命現象を外側から観察することしかできず、技術的操作をするだけの情報を得られないということ。

②歴史的な自然の中に横たわっている技術的な操作の限界を破れないせいで、技術が生命に対して全く手出しできず、その進歩が停滞しているということ。

③人間は生命現象を外側から観察して、その内部に対して憶測をめぐらすことしかできないので、本質的に自然に服従することでしか生命を維持できないということ。

④人間は、いつでも素朴自然主義の技術倫理を尊重するために、生命現象を外側から観察するだけで、その内部は憶測をめぐらすこともできないということ。

⑤素朴自然主義の技術倫理の枠組みの中で、生命内部の要素が他の要素から分離され認識され、あるいは置き換えたりする操作が行われるということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》