2015第2学期『現代文基本マスター』〈本題〉7 中村雄二郎『正念場ー不易と流行のあいだで』要約&復習問題

【要約】

私の痛みに対する関心は、十年あまり前に家内が乳ガンで手術をした折りに麻酔への過信が時には深刻な後遺症をもたらしていることを知ったことがその契機だが、それにつけて現代社会では〈痛み〉の人間的な意味があまりにも等閑にされているのではないかとも思う。痛みや怪我を単に感覚的な苦としてなんでもかでも取り除こうとすれば、痛みや苦による快の増幅や人間的な訓練の機会を失わせるだけでなく、痛みの感覚と表裏一体で成立している人間の〈開かれた感受性〉を圧し潰すことになる。他人の痛みへの思いやりの基となるこうした感受性の喪失は、対人関係・人間関係の感覚の鈍化だけでなく、自然や生命に対する感覚の鈍化をも招く。その点で以前から、麻酔学が科学として素晴らしいものの、感情といってもいい全体的な痛みを〈感覚〉として局所化・部分化した上で脱感覚して大きな成果を挙げている点が以前から気になっていた。そこで九州麻酔専門医会のセミナーで麻酔医の人たちと意見交換する機会を得た際に私見を述べたが、私の主張する痛みの持つ意味の根源性と拡がりについて私が出した提言に、〈科学的医学〉の中で現代の麻酔医療を中心に推し進めてきた世代の医師からは反発はあったものの、〈開かれた感受性〉については、若い層の人々を中心に強い関心と共感を示してくれた医師たちが多くいたので心強く思った。

 

【問7】

現代の医学は痛みの持つ意味を等閑に付し、〈感覚〉として局所化・部分化して技術的に取り除くだけだから。(50字)

 

《復習問題》

テキスト本文69~70行目「このような~応急的、近視眼的でしかない」とあるが、このような態度を端的に述べた箇所を含む一文を指摘し、その最初の5文字を抜き出せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

そしておそ(55行目)