2014第1学期『青木邦容の現代文』第8講建畠晢「美術館のジレンマ」要約を兼ねた復習問題

【要約を利用した復習問題】

次の文章内にある空欄に当てはまる表現を以下の選択肢から選べ。(解答は最下段)

【要約】

 一般的には美術館=展覧会という印象が強いが、そもそも美術作品の本来のありように照らせば、展覧会という鑑賞形式は不自然という意味で不思議である。元来、美術作品というものは、その自立した価値を個別に鑑賞すべきものであって、展覧会のテーマに見られる、作品自体の“外”にある基準に則して鑑賞されなければならない謂われはないからだ。それどころかそうした鑑賞形式下では、自立した作品の鑑賞を妨げ、その自立性を脅かしかねない。美術館は、たしかに作品を時の権力や宗教への奉仕から解放し、“芸術のための芸術”の安住の地となったが、その鑑賞形式の( A )ゆえに作品の自立性を脅かすというジレンマを持っている。しかし、たとえ美術館を否定し、作品を外に出すという方法で作品の自立性を回復しようとしても、結局は作品を路頭に迷わせるか、企業なり行政なりの新たな権力にモニュメントとして奉仕させるようになるか、またあるいは永続的な作品でなくしてしまうなど、結局は( B )という同じジレンマに陥ることになる。そういう点では、ジレンマさえ気にしなければ、美術館は作品にとっては居心地の良い空間と言える。こうした矛盾した存在が美術館であり、それでも近代的な使命として作品を市民に公開するということを遂行しなければならないのが、美術館の不可避的宿命である。そうであるからこそ、美術館の学芸員は、展覧会が自らの思想の表明であることを自覚しなければならない。展覧会は鑑賞者に、一定の文脈で作品を鑑賞させ、また鑑賞者を( C )にするからである。これは観客が学芸員の目のフィルターを通してしか作品に接することができないということであり、そういう意味で学芸員は( D )を有する。この点でやはり、美術館は作品の自立性を脅かす存在から抜け出せない、深く矛盾した存在であるが、その解消しがたいジレンマの中に美術館の魅力の源泉がある。モダニズムを象徴するアポリアとも言える、この矛盾の重要性に気づき、( E )べきであろう。

【 問1】空欄A.C.Dに当てはまる語句をそれぞれ一つ次から選べ。

➀普遍性 ②権力 ③象徴 ④博識 ⑤特殊性 ⑥苦行 ⑦文脈 ⑧奉仕 ⑨世俗性 ⑩ジレンマ

【問2】空欄B.Eに当てはまる表現を次からそれぞれ一つ選べ。

➀作品の自立を脅かす 

②作品を路頭に迷わせる

③作品を王侯貴顕の館へ戻す

④作品の我が儘を許容する

⑤作品を世俗に奉仕させる

⑥学芸員の名前を冠して責任の所在を明らかにしたような展覧会がもっと開かれる

⑦学芸員がいかに権力者であるかという自覚を持ち、その力をふるわないようにする

⑧学芸員が美術館の中で行っていることが、いかに恣意的で偽善的かが分かるような展覧会の開催をもっとする

⑨学芸員の立場を、もっとニュートラルに近づける努力をともなった展覧会の企画を行う

⑩学芸員が、もっと鑑賞者に対しても作品に対しても中立的で謙虚な気持ちになれるような、自らの名前を冠した展覧会を企画する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【解答】

問1 A ⑤ C ④ D ②

問2 B ① E ⑥