2013冬期Ⅰ期『青木邦容のセンター現代文』第1講野矢茂樹『哲学・航海日誌』復習教材

問題1 次の文章=要約の空欄に当てはまる表現をテキスト本文中から抜き出して書け。

意思作用の空虚さという点で、身体と身体ならざるものたちとの相違点はないが、全ての( 1 )行為が何らかの身体動作を含み、またそれが意識されない点に( 2 )が存在する。しかしそれが意図せぬ結果を引き起こした場合、その結果を引き起こした責任の自覚を通して、その原因たる自分の身体動作が意識され、それまで意識されなかった身体がその瞬間から意識されるようになる。そういう点にも( 3 )が見られる。

問題2 82~83行目『われわれはまさに「身体を張って」行為するのである」とあるが、これを説明した箇所を70字以内で抜き出し、その最初の5字と最後の5字を書け(句読点含む)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

問題1

1意図的

2身体の独自性

3身体の独自性

問題2

すべての意~とになる。(74~75行目)

 

2013冬期Ⅰ期『青木邦容のハイレベル現代文』第1講矢萩喜従郎『平面 空間 身体』復習教材

問題 次の文章=要約の空欄に当てはまる表現をテキスト本文中から抜き出して書け。

様々な状況、状態で感じる不快な感覚を分析してみると、それは痛みにも似た感覚であり、それを「( 1 )」とした。一列になって並んだ人は、自分が両側にいる人達との間隔を推し測りながら、その間隔を決定しているが、両側の人達も同じ行為を( 2 )に行うことによって、お互いが均等の距離をもって並ぼうとする。そこでは、自分自身の身体が通常意識されず、他人の身体や物が存在することによって生じた( 3 )であるという意味で、意識する主体とは透明な状態であると言える。その透明な状態にある自身の身体が、隙間や空間を変化させた時に、隙間や空気の粒子の変化に反応し、障りの感覚を感じることになる。つまり両側の隙間が均等であれば障りの感覚は感じないが、視覚的にそうした距離が取れない状態になると、その感覚に( 4 )なども反応し、障りの感覚が生じる。障りの感覚が、( 5 )由来のものであるのは、日常生活における先端恐怖症の例を見ても明らかであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《解答》

1障りの感覚

2連鎖的

3隙間や空間

4皮膚感覚

5視覚

 

 

2013第2学期『青木邦容の現代文』第12講滝浦静雄『「自分」と「他人」をどうみるか』要約

《要約》

漠然とした快に対して苦痛は必ずどこかの痛さ、苦しみであることから、それは対象言語に属する実体を備えたものと言えるが、かえってその明瞭さ故に、我々は他者の痛みに感情移入することができ、痛みを分かち合い、間接的にであれ対処することができる。その点で、苦痛こそは共生の契機であり、痛みの分かち合いにこそ倫理の開始点があると言える。

2013第2学期『青木邦容の現代文』第11講熊田孝恒「マジックにだまされるのはなぜか」要約

《要約》

マジックは、マジシャンと観客の間のコミュニケーションによって成立するが、そこにおける重要な人間の特性は、人間が他者の心を理解し予測する特性を有することである。人間は成長するにしたがって、他者の感情や意図を理解する機能としての「心の理論」を身につけていく。マジシャンと観客は、この「心の理論」を駆使し、また観客はそれでいて引っ掛からないようにする、という高度な駆け引きを行っている。そうしたマジックは観客を欺くエンターティンメントであるが、観客は、しかしながら完璧にだまされることを楽しむというきわめて特殊な心理状態を経験する。観客がだまされることを楽しむ人間のメカニズムは分かっていないが、そのヒントは脳の活動にある。基本的にはマジックを見た時に起こる脳の活動部位は、既存の知識から導かれる期待に反するようなことを経験した時に活動する部位と同じである。脳は、生体にとって予想に反する出来事を、より的確に検知した方が生存に有利であるため、それを見つけることを楽しく感じるようにプログラムされている可能性がある。その点で、マジックを始めとするエンターティンメントの楽しみの根源が人間の生存にかかわるメカニズムに関連するかもしれないという仮説は、興味深い。

2013第2学期『現代文読解』第12講茂木健一郎「疾走する精神」要約&記述解答

《要約》(講義時間の都合上、早いペースだったので、講義内容を補完する意味で長めに構成しています。)

世界中の人々がインターネットという「スモール・ワールド・ネットワーク」でお互いに結び付けられる現在、世界中の人々が持つ、よりよく生きたいという素朴で切なる願いに資するような思想でなければ、世界的な影響力を及ぼすものにはなり得ず、それはさまざまな地域に住む人々がよりよく生きることを助けるものでなければならない。地域を超えた結びつきがますます密になるこれからの社会では、異なる他者が共に生きる共生の生命哲学が必要だが、「もののあはれ」の伝統を持つ日本は、そうした生命哲学を生み出すことができるはずである。というのも、「もののあはれ」を解する日本人の生命哲学の中には、もともと変化と切り結んで自らを変えるという叡智があったはずだからだ。そもそも色合いが異なる者同士が丁々発止と渡り合ってこそ、「共生」は意味を持つが、またそのためにこそ国家や社会の中にある恒常性への志向ということ自体を対象化し、客観化し、それを多様性の増大のめにうまく機能させるような発想が必要である。日本に限らず、ある国が独自の伝統を言い立てる時は、大体において国としての同一性、自我が揺るがされている時だが、その時に伝統を守るという恒常性を、変化に対して目を瞑る方向ではなく、新しい自我を作り上げるように積極的に運用する必要がある。その意味で自己同一性を保つということと、変化に身をさらすこととは矛盾せず、むしろ頑強な恒常性維持作用があることが、多様で偶有性を増す現代社会における生命哲学を全うするための前提とも言える。以上の点からも日本が、他者に開かれると同時に確固とした自己を持った魅力的な国になるために、日本の伝統である「もののあはれ」の核心には実は強靱な自我があるという洞察が必要なのだ。

《問8》異なる他者が共生するための、頑強な恒常性維持作用をもとに変化に身をさらし自らを変えるという叡智を元々持っているから。

(別解)

共生には、「個」の確立とその変化が必要だが、「もののあはれ」は、強靱な自己を前提に自らを変えられるという叡智を持つから。

2013第2学期『現代文読解』第10講上田三四二「子規の尖端」要約

《要約》

子規の言葉のなかで私のもっとも好きなものは「病牀六尺」に収められているが、この時の子規は余命、あと1ヶ月と少しだった。ここには「造化の秘密」を窮める予感を持ち始めた子規がいるが、その1年と3ヶ月前に作られた「おぼつかなくも筆を取りて」では、彼は写生の実践の最上の達成、つまり写生でありながら自らの感興を出すことに成功しているが、「造化の秘密」をうかがうまでには至っていない。またその6日後の「しひて筆を取りて」十首では、彼は自らの理論である写生から自由になったかのように、ひたすら先途無きおのが身ひとつを嘆くように、自らの切実な思いを歌っているが、やはり「造化の秘密」には至っていない。しかし「しひて筆を取りて」では、彼は写生理論から跳躍し、自らの心そのものを歌うことに成功している。

2013第2学期『現代文読解』第9講日野啓三「東京の謎 眼に見えぬ濃密な感触」要約&記述解答

《要約》

東京の東京性は、その都市の情報の密度とそれがもたらす緊張度にある。その感触こそが現代であり、その凝集点が本当の現代都市である。そこでは情報が我々の感覚と意識下を刻々に直撃し、密かに通じ合い、意識の微細化と拡大を通して、常識的理性を素通りし、我々の現実感の根本を変えつつもある。そしてそうした高度情報の集中点東京は、今、私の原始的なアニミズム理性を徐々に蘇らせはじめているように思えてならない。

《問4》(解答例)

東京は、地方都市とは異なり、情報が集まり、それが新たな形として放出されていくといった、その情報の密度が異なるということ。(60字)

〈別解〉

東京の情報密度が高く、それによって肉体的な感覚器官を超え、微細化、拡大する意識によって捉える、眼に見えぬものの緊迫度。(59字)