2013第2学期『青木邦容の現代文』第1講芦原義信「街並みの美学」要約

西洋式ホテルと温泉観光ホテルとの対比から分かることは、日本人の「うち」というのは、空間領域的にとらえると「靴をぬいだ」空間のことを指し、西洋人のそれとは著しく空間意識の点で隔たりがあるということである。西洋人にとって「うち」つまり「内部」とは、建物内部のことではなく、個室の中を指す。家の中でも靴を履いて暮らす習慣を持つ彼らにとっては、家の内部は外部の延長上に存在するものとして認識されている。いずれにせよ、このような空間意識の違いがあることを意識しないでは、ある場所を内部と考える人と外部と考える人の間に、不都合や不快感をもたらしてしまう。日本はその内的秩序を整える伝統から、建築の外部に無関心であり、西洋はその外的秩序の考えから、家の中まで靴のまま入る習慣や、都市空間の充実という現象を生み出した。