2013第2学期『現代文読解』第7講佐々木毅「学ぶとはどういうことか」要約&記述解答

《要約》

人間社会に巣食う不正や暴力、欲望の暴走、予測不可能な不安定性といったものに対する嘆きや悲しみ、やり切れ無さが人間の「学ぶ」ことへのエネルギー源であり、そこから大思想が生まれる。しかし、その人間的な現実を作り出しているのも他ならぬ人間であり、人間はそうした現実に疑いを差し挟み、新しいことを試み、それを通して人間世界を変え、それを作りかえることで文明を作り上げてきた。しかしその文明では日々、さまざまな問題が生じるため、新しい工夫によって一歩一歩前に進むこと以外にやりようがないが、そうした問題に対する具体的な対処が「学ぶ」ことの内容を形成する。その意味で「学ぶ」ということは、文明の性格と深く結びついている。プラトンは、その万物を統御する神による支配というモデルにおいて、「すべてがわかっている」人間、智者こそが支配者になる政治体制を理想としたが、人類が過ちを犯すことがある以上、常に様々な問題が生じ、「学ぶ」ことが求められる。プラトンの考えに比べれば、終点のない「学び」である、「より適切なもの」を選択する立場は、究極性や絶対性はなく、あるのは生命の働きに依拠した継続性である。そこには選択の余地と過去の選択の修正可能性があり、それはすなわち人間の現実が「可能性の束」であることを意味している。その意味で、人間は新たな可能性を切り拓く「中間的」存在としての定めに従いつつ、絶対的な権威を振りかざす特定の人間に百パーセント臣従することの薄気味悪さからは、間違いなく開放されていると言える。

《問5》

様々な問題に対して、人間は新しいことを選択し、企て、それらに具体的に対処することで、人間世界を作りかえていけると考える。