2013冬期Ⅰ期『青木邦容のハイレベル現代文』第5講山崎正和『藝術・変身・遊戯』解説及び復習教材

問題 10行目「二重のクウキョ」とはどういう状態か。50字以内で述べよ。(解答は一番下)

《テキスト掲載設問補助解説》

問2

イ第1段落後半の内容が理解出来ているかどうか。私たちは現実の日常生活の中で、「前向き」に生きている時がある、つまりそれは「主体的」に生きているわけだが、そういう時にはある目的達成のために、現在の自分を手段にしてしまう。すると常に主体的であろうとすればするほど、「かえって」今の自分は、次々と手段化され、決して「今」が充実することがないと言っている。青木方式21・22から指示語「これは」に注目。直前の「(目的に向かって)生き急ぐ」⇔「置き去り」という矛盾した表現に注目。あるいは青木方式6から、31行目「ところで~だろう」内「このような逆説」という表現に注目しても解ける。

ハやはり青木方式21。1文にして考える。まず「目的のないものに目的追求の姿勢で立ち向かう」に注目。この表現が意味するところは「頑張っても無駄に終わる」ということ。また、青木方式24で空欄直後の指示語以下を見る。「それを避けることは難しい」とあり、またこれを(必要ならば)28行目「キョウセイされている」まで読みつなげても良い(青木方式33)。いずれにしても「できないことをさせられている」という意味になることが分かるであろう。ここから人間の「悲劇」という表現が導かれる(「滑稽」という表現が付いているのは、人間がそれに気付かずに、自分達にとって「良いこと」と思って続けている点を皮肉っている)。

問3講義で説明済み

問4講義で説明済み

問5講義で説明済み

問6 理由説明の公式を使う。また傍線部に関して今回は「充実して生きようとする人間の善意」「裏切られる」が「ピックアップ」されている。こういうタイプの問題は、まずそれぞれを説明しようとするとうまくいくことが多い。

「充実して生きようとする人間の善意」→17行目に注目「人間は~押しつけてくる」→人間は人生を充実させるために様々な技術を産み出す。

「裏切られる」→13~15行目に注目「人生のかな~のである」→現在を充実させるということから人間を遠ざけてしまう(=当初の目的から遠ざかっていく)

これらをドッキングすると直接理由が完成。

 

(直接理由)充実した生のための「技術」はかえって人間を、現在を充実させて生きることから遠ざけるから。

 

これに公式を当てはめてまず間接理由を考えてみる→「なぜ技術は人間を、現在を充実させることから遠ざけてしまうんだろう?」→18行目に注目『技術は、人間にたいして「目的追求(未来に向けて今を犠牲にする)」の姿勢を押しつけてくる』からだ。

 

→間接理由に採用。直接理由とドッキング→《解答例》充実した生のための「技術」は人間に「目的追求」の姿勢を押しつけ、かえって現在を充実させて生きることから遠ざけるから。

 

問7 本文の要約的問題。まず大切な箇所を青木方式11から31行目「ところで」以下だと認識できたかどうか。そもそも人間の人生が否応なく目的追求型になってしまっている中で、芸術が何を人生にもたらすのか。一言で言えばそういう人生の「中断」である。「中断」ということはまたそれを始めなければならない。しかし、一時の間「中断」することで、人生は「充実したもの」を僅かながらではあるが取り返せるというわけである。

 

そこで-まずポイント①「実人生を充実させる」が欲しい。これはミクロ。

    ポイント②としては「芸術の意義」=34行目から「目的追求の姿勢を逆転させる構造(持つから)」をマクロとして使いたい。

《解答例》芸術は、その目的追求の姿勢を逆転させる構造によって、人間の実人生を充実させる。

 

ダメな解答=アメーバ解答は「芸術は、現実行動の流れを中断し、人間の目的追求の姿勢を逆転させる構造を持つ。」という感じのもの。つまりこんな解答は、「一箇所をまとめただけ」で「(筆者の主張を)考えておらず」、またもしこういう「~構造を持つ」という終わり方にしていたならば、芸術の「構造」の説明になってしまっており、設問が要求する「実人生に対する芸術の意義」を説明していない点でも×。アメーバ。

【復習教材《解答》】10行目「二重のクウキョ」とはどういう状態か。50字以内で述べよ。

過去と未来の間で、現在の自分を未来の自分のための「手段」とすることで、自分の現在を生きていない状態。